「君は満洲という白紙の地図に、夢を書きこむ」
日本からの密偵に帯同し、通訳として満洲に渡った細川。ロシアの鉄道網拡大のために派遣された神父クラスニコフ。叔父にだまされ不毛の土地へと移住した孫悟空。地図に描かれた存在しない島を探し、海を渡った須野……。奉天の東にある〈李家鎮〉へと呼び寄せられた男たち。「燃える土」をめぐり、殺戮の半世紀を生きる。
第168回直木賞、第13回山田風太郎賞受賞作。
いやはやすごい。まず600ページを超える本の厚さで圧倒され(ソファで寝っ転がって読むと腕が疲れます)、内容の濃さになお驚かされる。
満州のお話だから、浅田次郎の「蒼穹の昴」のシリーズと比較すると、小川のこの作品においてどれだけの人間が簡単に死んでいくのかと……主人公だと思っていた人物まで簡単に死んでしまう。だからさまざまなキャラの視点から描かれているわけで、嫌う人もいるだろうがわたしは楽しめた。
いかにも中国風のむちゃくちゃな展開、たとえばその町の若い女性すべてと交わり、三十人以上の子をもうけるなんて設定が平気で出てくるのである。殺戮の裏に微妙なユーモアもしこんであるし、冷静なインテリがやみくもに突撃する描写も説得力がある。
戦争のはらわたというものが描かれている感触。直木賞納得。
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