万延二年二月三日(1861年3月13日)に生まれたと称する男が、看護師に語る近現代史。
奥泉光は東京に語らせるという手法を採用したが、島田は“死なない”人間を主人公にもってきた。ある意味ストレート。
作家としてこんな形で歴史を語る欲求は抑えきれないに違いないのだが、この書の勘所はもうひとつ。若い頃の記憶は微細だけれども、次第に人生が駆け足になってくるあたり。
還暦が近いわたしですら実感しているのだから、159才まで生きた主人公にとってはそれはそれは……。いつまでもルックスが変わらないため、戸籍を取り替えざるをえないあたりの展開が可笑しい。
ケン・グリムウッドの「リプレイ」では、何度も人生をやり直す主人公が、前世に残してきた家族との別れになかなか対応できないあたりの描写にうなったが、この小説も多くの死に彩られている。長生きをするのって、しんどいねえ。
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