Vol.43「秒読みの殺人」はこちら。
トリックは、ドラマ的にはシンプルなもの。ペットであるドーベルマンに、ある方法で攻撃命令をくだし、妻の不倫相手をかみ殺させる。それだけ。
ひねりがあるとすれば、その命令が映画ファンにおなじみな言葉だったことか。キーとなるその言葉を被害者に話させるために、犯行現場には数多くの映画的ギミックが用意してある。
その言葉とは「バラのつぼみ」rosebud。
ご存じ「市民ケーン」における、臨終のつぶやきだ。意味するところはラストシーンでようやく明らかになる。幼少期に彼が親しんだ雪ぞりに刻まれていたのである。エディプスコンプレックスの象徴ね。
犯人の心理学者(ニコル・ウィリアムスン)は電話のベルに犬が反応するようにしつけ、受話器にむかって「バラのつぼみ」と話した人間を攻撃する。現場は犯人の自宅。その雪ぞりはもちろん、W.C.フィールズのビリヤード台などが置いてある。ひょっとしたら全部本物かも。
映画ギミックはそれにとどまらず、殺人犬の名がローレル&ハーディだし、原題のHow to Dial a Murderは、やはり浮気がキーワードの「ダイヤルMを廻せ!」Dial M for Murderのもじりなので徹底している。
にしても危うい計画だ。犬を信頼するのはいいとしても、被害者がなんらかの自衛手段をとることだって考えられたはず。また、犯行時刻に殺人現場にかかってきた電話の通話記録をLAPDはチェックしないのかしら。犬を殺人の手段として使い捨てにする犯人の非情さと、この間抜けさとの同居がどうもね。
コロンボの見せ場は、西部劇のセットを訪れるあたり。タンブルウィードが転がるなかをレインコート姿の中年刑事が歩く設定は笑えます。
犯人と同居する女性を演じたのはなんと「Sex And The City」「ゴーストライター」のキム・キャトラル。言われなきゃ絶対にわかりません。
Vol.45「策謀の結末」につづく。
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