原作が掲載されていた講談社のモーニングは、酒田に「隆月(りゅうげつ)」というラーメン屋があったころに置いてあったので、食べながら読んでいた。「OL進化論」(秋月りす先生!お身体はだいじょうぶなんですか)や「大東京ビンボー生活マニュアル」(前川つかさ)など、講談社らしい連載が多くて好きだった。
その雑誌に長期連載されていたのが「沈黙の艦隊」。原子力潜水艦が独立を宣言し……ってたまに読んでいるだけでは何が起こっているのかさっぱり(笑)。まあ、かわぐちかいじがくり広げるお話が、右翼だの左翼だのという範疇とは違うところで繰り広げられていることだけはわかった。
さて、あの長大なお話を二時間強の映画で語りきることができるはずはない。見る側もそのことは承知している。ということで主人公の海江田艦長が何をめざしているのかは、ほとんどラストにならないと明かされないのは仕方がないんでしょう(笑)。
ただ、それにしたってこの映画からは“熱”が感じられないのだ。製作も兼ねた大沢たかおはがんばったようだけれども、たとえば同じ潜水艦ものでも「ローレライ」にようなアクロバティックな動きも少ないし、政治映画としても閣僚たちに味がないものだから(外務大臣の酒向芳を除く)、そっち方面でも興奮させてくれない。
たとえば「シン・ゴジラ」のときは、無能だと思われていた農林水産大臣(平泉成)が、総理になった途端にその真価を見せるあたりの芸があったんだけどなあ。
東宝は経営に余裕があるからか、大作に若手をよく起用してくれる。この作品に「ハケンアニメ!」の吉野耕平を起用したのも慧眼だと思う。しかしたとえば、脚本に「機動警察パトレイバー」や「空母いぶき」の伊藤和典を起用したらどんな映画になっただろうと考えてしまうのは、きっとわたしが嫌味な客だからか。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます