事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「ボタニカ」 朝井まかて著 祥伝社

2022-06-21 | 本と雑誌

植物学者、牧野富太郎のお話。誰もが知る偉人でありながら、はて、この人は実際に何をし、どんな人だったのだろう。

……うわあああああ、ほとんど性格破綻者じゃないか!

裕福な酒屋に生まれ、何不自由なく大好きな植物の収集、書籍の購入を続けるうちに実家の経営は傾き、ついには潰してしまう。それどころか借金はふくらみ続け、しかしそれでも彼は金を湯水のように使い続ける。

従妹を嫁にもらい、実家の経営は彼女に丸投げ。夫の学問のためならと支援をやめない妻の鏡。けれども牧野は上京し、女をつくり、子までなす。

アウトラインだけ見るとひどいでしょ(笑)。こんな人が近くにいたら迷惑だろうなあ。しかし彼には圧倒的な画力と人間的な魅力があり(美男でもある)、学者として名を成してゆく。

ただし、“正統な”学者たちからは排斥されることの連続。牧野は牧野で開き直っているが、彼の経済的苦境の多くはそのことが背景にある。

もっと上手に生きることができないのか、とあきれながら読むが、この破天荒さこそが牧野の本領であり、植物に愛された男の人生だったのだろう。

「類」「白光」につづき、朝井まかては“異様さ”をかかえた人物を描いておみごと。

事務室にやってきた理科教師に

「理科の人間としてさあ、牧野富太郎ってどんな存在なの」

「神様よ」

即答でした。どこの学校の図書館にも牧野の図鑑はあるだろうしな。しかも来年の朝ドラの主人公は牧野がモデルだという。だいじょうぶか、お茶の間にこの破天荒な神様は受け入れられるのか!?


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 明細書を見ろ!2022年6月号 ... | トップ | 怒濤の中山七里「おやすみラ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

本と雑誌」カテゴリの最新記事