植物学者、牧野富太郎のお話。誰もが知る偉人でありながら、はて、この人は実際に何をし、どんな人だったのだろう。
……うわあああああ、ほとんど性格破綻者じゃないか!
裕福な酒屋に生まれ、何不自由なく大好きな植物の収集、書籍の購入を続けるうちに実家の経営は傾き、ついには潰してしまう。それどころか借金はふくらみ続け、しかしそれでも彼は金を湯水のように使い続ける。
従妹を嫁にもらい、実家の経営は彼女に丸投げ。夫の学問のためならと支援をやめない妻の鏡。けれども牧野は上京し、女をつくり、子までなす。
アウトラインだけ見るとひどいでしょ(笑)。こんな人が近くにいたら迷惑だろうなあ。しかし彼には圧倒的な画力と人間的な魅力があり(美男でもある)、学者として名を成してゆく。
ただし、“正統な”学者たちからは排斥されることの連続。牧野は牧野で開き直っているが、彼の経済的苦境の多くはそのことが背景にある。
もっと上手に生きることができないのか、とあきれながら読むが、この破天荒さこそが牧野の本領であり、植物に愛された男の人生だったのだろう。
「類」「白光」につづき、朝井まかては“異様さ”をかかえた人物を描いておみごと。
事務室にやってきた理科教師に
「理科の人間としてさあ、牧野富太郎ってどんな存在なの」
「神様よ」
即答でした。どこの学校の図書館にも牧野の図鑑はあるだろうしな。しかも来年の朝ドラの主人公は牧野がモデルだという。だいじょうぶか、お茶の間にこの破天荒な神様は受け入れられるのか!?
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