小さな町工場を営む気弱な男、中村(堺雅人)。彼は糖尿気味なのにプリンのつまみ食いがやめられない。買い物先から「プリン食べちゃだめよ」と妻(坂井真紀)から留守電メッセージが入る。しかしその妻が買い物から帰ってくることはなかった。木島(山田孝之)が運転し、小林(綾野剛)が同乗する車にひき逃げされたからである。
5年後、木島の出所を待って中村の復讐が開始される……
展開はこのようにシンプルなものだけれど、この映画(原作は舞台劇)は少なからずそのシンプルなストーリーから逸脱する。
仲間(田口トモロヲ)に向かってすら灯油をぶっかけ
「バーベキュー!バーベキュー!」
と叫ぶ木島の狂気。その狂気に違和感をいだきながらも友人でいる小林。
工事現場の警備員のバイトをしている由美子(谷村美月)は、木島に強姦されながらも彼と関係をつづける。
中村の亡妻の兄(新井浩文)は中学教員で、義兄に再婚を進めながら、木島に脅迫され、殺されそうになる。
みんな、ちょっとずつ変なのである。
特に変なのが中村で、プリンがやめられず、デリヘルの女の子(安藤サクラ!)とはセックスできず、妻の留守電メッセージをくりかえし聴く弱気は変わらないが、同時に出刃を持って木島を尾行する執拗さが共存している。
そしてついにその夜がやってくる。
復讐を完遂してはあまりに類型だなあ、と思った瞬間にこう来たか。中村が木島に投げつけた言葉こそが最高のツイスト。すばらしい。
脚本と監督は「葛城事件」の赤堀雅秋。製作はなんとテレビマンユニオン。
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