第32回「独裁者」はこちら。
さあ今回はその名も「仁義なき戦い」と称してオリンピック招致のどす黒い背景を。
久しぶりに美川(勝地涼)が登場し、女遍歴をいちいちその地の方言で語る(誰も聞きたくないのに)。当然、このタイトルなのだから広島も登場し、まるで山守親分(金子信雄)や広能(菅原文太)のよう。ちなみに、わたしは第3作「代理戦争」の大ファンです。
他のキャストにもそれは徹底し、田畑、杉村(加藤雅也)、副島(塚本晋也!)が「杉村のぉ」的に解説されるのがおかしい。きわめつけはビートたけしで、「ってんだよバカヤロー」を連発。仁義なき戦いを通り越してアウトレイジになってます(笑)。
死亡フラッグが立ったかに思われた嘉納治五郎は、単に腰痛……まあ、若いころから腰は酷使していたでしょうしねえ。おかげでムッソリーニとの直談判に彼は行くことができず、副島たちに託す。
治五郎の不在が、むしろIOCという存在の特徴をあからさまにする。国の代表として、政治に左右されないと言えば聞こえはいいが、貴族たちのクラブ的な色彩が強く、だから饗応されるのは当然という雰囲気がある。いや、あくまでわたしにはそう見えるというだけですけれど。
クラブだから、セレブである嘉納のことは認めても、いかに国際連盟の役員だったとはいえ、杉村のことは鼻も引っかけない。
おかげで独裁者であるムッソリーニの了解をとりつけても、イタリアの理事はローマ開催を簡単にあきらめたりはしない。しかし……
朝日新聞政治部の記者なのに、田畑はオリンピックがらみで長く不在となる。それを可能にしたのは緒方竹虎(リリー・フランキー)の腹芸。スクープをとれさえすればそれでOKだと。「白い猫でも黒い猫でも、ねずみを捕るのがいい猫」というわけ。
のちにフィクサーとして名を成す緒方の面目躍如。同郷の深町秋生「猫に知られるなかれ」(ハルキ文庫)にそのあたりがたっぷり描いてあるのでぜひ。
さあ、志ん生はようやくなめくじ長屋を脱出。しかしその引っ越しは昭和十一年二月二十六日のことだった。これ、ほんとのことだったんですねえ!
第34回「226」につづく。
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