ウォシャウスキー兄弟監督・脚本
たとえばあなたが映画会社の重役だとして、「自分のいる現実は人工知能のつくりだした仮想現実に過ぎず、その世界(マトリックス)で覚醒した救世主が、現実を取り戻すためにカンフーでたたかう」という企画を、「バウンス」などの切れはあるもののほとんどビョーキの映画オタクな兄弟が持ち込んだら(実際、兄の方は変態)、あなた、金出します?
なんとこんな無謀な企画に大金を注ぎ込んだのがジョエル・シルバーであり、ワーナー・ブラザーズだったわけだ。ハリウッドおそるべし。
でも1作目が公開された99年、県教組の書記局で、同じように映画ファンだった副委員長と「堀くん、マトリックス、観た?」「観ました観ました」「あれ、面白かったねー」と小声で話し合わなければならないほど、“いい年をした大人にとっては”話題にするのも恥ずかしい映画だったような気もする。小学生のわたしの息子まで、例ののけぞって弾をよけるシーンを「まとりっくすっ!」とマネをするくらい陳腐化したし。
そして2作目。100億も稼ぎ出そうかという大ヒット。もはや大人のたしなみもへったくれもなく、みんなこの日本アニメ(ジャパニメーション)に触発されたオタク映画に熱狂している。だいたい主人公たちの名前にしてからNEO(→ONE=求められし者)だのモーフィアス(眠りの神)だのトリニティ(三位一体)で、乗っている船がネブガドネザル(バビロニアの王)号である。思いついても恥ずかしくてつけないだろう普通。
評判のアクションにしたって、噂の100人スミスが襲いかかるシーンはスーパーマリオだし、モーフィアスが斬鉄剣もどきで18輪トラックをぶった切るシーンなど、ほんっとうにマンガそのもの。石川五右ェ門かお前は。こんなもんで喜んでるなんて一体どれだけ観客たちは幼稚化してしまったんだっ!!
……すいません、思わず興奮してしまいました。そしてもちろん、幼稚化してしまった観客の代表のようなわたしは、エンドタイトルで拍手しそうになるほど喜んでいたのでした。おそらく映画史上もっとも馬鹿馬鹿しいカーチェイスや、ラストのキアヌ・リーブスとキャリー・アン・モスのラブシーンだけでも(明らかに「スーパーマン」の1作目を意識している)、金を払った価値はありました。笑ったなあしかし。
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