その15「曲球る」はこちら。
同じ顔をしたふたりの女性(桐谷美玲)が同時進行で描かれる。一方は瀟洒な邸宅でくつろぎ、もう一方は地味な服装でかいがいしく働いている。都会に住む“彼女”の方に侵入者。頭部をハンマーで殴り、彼女は昏倒する。普通の、強盗傷害事件のはずだった。しかし遠く離れたもうひとりの“彼女”がその事件を察知するまでは。
ふたりは双子。古畑任三郎の「ラストダンス」のときに紹介したように、ミステリには双子と中国人は登場させてはいけないことになっている。そのタブーに挑戦。はたして双子の間で、テレパシーは存在するのか。
「シンクロニシティ(意味ある偶然)にすぎない」と湯川は一刀両断。
「でも妹さんは犯人の顔が見えた、っていうんですよ」と岸谷刑事。
「それを早く言え」
昏睡状態の妻に向かって、経営コンサルタントを生業とする夫(桐谷健太)が
「なんで生きてるんだよぉ」
と吐き捨てる。犯人はもちろん妻の財産目当ての彼だが、ちゃんとアリバイは用意してある。報酬を払った委託殺人だったのである。
にしてもこの夫のやることは(指紋を気にもせずに人工呼吸器に触れるなど)およそ頭のいい人間のやることではない。そこで湯川は、いつもと推理の過程を逆に……
知り合いの殺人ではないかとたくさんの写真を見せて失敗。そこで妹に似顔絵を描かせることに。早く気づけよ。しかし彼女の絵はおそろしく稚拙だったというオチ。
「こんな人間、います?」
実行犯は渋川清彦。似顔絵そっくり(笑)。彼がその後、性格俳優としてどんどん成長したのに比べ、美少女だった桐谷美玲はすっかり名前を聞くこともなくなった。わからないものだ。
その17「密室る(とじる)」につづく。
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