正直にいうと、わたしは三國連太郎という俳優がよくわからない。
彼が出演しているだけでその作品の格が上がるのは確実だし(市川崑の「犬神家の一族」に、犬神佐兵衛の遺影がないことを想像すればよくわかる)、「飢餓海峡」(内田吐夢)や「戒厳令」(吉田喜重)「復讐するは我にあり」(今村昌平)などの、気が遠くなるような名演を考えると“名優”で“大御所”であるはず。
しかしそんな範疇から、彼はいつもどこかしら逸脱している。
おそらく三國連太郎は芸能界の権威なるものに興味はないのだろうし、逆に、世間に背を向けていることを誇ることからも逃げおおせている。
役者バカ、というには冷静すぎ、枯淡の境地ともまた無縁。やっぱり、よくわからない。
怪優、としか表現できないのは、長時間のインタビューをおこなった佐野眞一だけではないだろう。だいたい、あのくせもの俳優が、なんで釣りバカ日誌のスーさんなのかすらさっぱり(笑)。
『怪優伝』は、そんなよくわからない存在である三國連太郎のフィルモグラフィーから、主要十本を選択して語らせた労作。
佐野は「東電OL殺人事件」や「巨怪伝」「凡宰伝」と同じように、週刊誌的エピソードで興味をつなぎながら、三國の本質に迫っている(少し、煽りすぎだとは思う)。
被差別出身者を養父として育ち、徴兵忌避、四度の結婚、太地喜和子との愛欲、五社協定を最初に破ったために、松竹の大船撮影所の門に
「犬・猫・三國、入るべからず」
と看板を取り付けられるなど、生きるために、演ずるためにさまざまな経験をしてきた彼が、まもなく90歳になろうといういま、ひねりも何もなく語る、特に俳優や監督たちへの評価が最高なのだ。ちょっと紹介。
PART2渥美清篇につづく。
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