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事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「PERFECT DAYS」(2023 ビターズエンド)

2024-02-14 | 邦画

その男の生活はルーティンの塊だ。近所のおばあさんの道を掃く音で目を覚まし、部屋にある植物に霧吹きで水をやり、自動販売機で缶コーヒーを買い、古い音楽を車のカセットで聴きながら職場に向かう。

その職場とは公衆トイレ。彼、平山はトイレ清掃を請け負っている。仕事は徹底している。

家に帰り、銭湯に向かい、地下街の飲み屋でチューハイをひっかけ、布団のなかで古本屋で買った100円文庫本(フォークナー、幸田文パトリシア・ハイスミス……「11の物語」はわたしも大好きでした)を読みながら眠りにつく。その日の情景がモノクロで平山の頭に浮かぶ。

役所広司がカンヌ映画祭で男優賞をとった作品。監督は「パリ・テキサス」「ベルリン 天使の詩」のヴィム・ベンダース。すばらしい作品だった。妻もわたしも涙が……


淡々とした日常を描いて、細やかな、静かな、同時に少し退屈な映画かと思ったら、激しく感情を揺さぶられてしまった。

音楽のセンスが抜群で、「ドック・オブ・ザ・ベイ」のような超有名曲もあれば、ヴァン・モリソン、パティ・スミスなどの渋い曲も続々。

それにしても豪華なキャスト。スナックのカウンターから出てきた石川さゆりが、あがた森魚のギターで「朝日のあたる家」を熱唱するというぜいたくなシーンもあります。

ラスト近く、役所広司と演技のうまさでは引けを取らないあの人も登場。まあ、役所が主演してベンダースが監督する映画に誘われたら誰も断れないよね。出演を断ったら絶対に後悔するし。

そしてこの映画がすばらしいのは、東京という街が、いかに美しいかを活写していることか。東京って、本当にきれいだ

コメント (6)
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光の君へ 第6回「二人の才女」

2024-02-12 | 大河ドラマ

第5回「告白」はこちら

この連休中は娯楽を貪った。なんと今年初めて映画館に行き、山崎賢人の「ゴールデンカムイ」(あんなに面白いとは)と役所広司の「PERFECT DAYS」(あんなに超豪華キャストだったとは)を堪能。

森見登美彦の「シャーロック・ホームズの凱旋」の企みがうれしく、いまは直木賞をとった垣根涼介の「極楽征夷大将軍」を読んでます。面白いです。

それに加えて近ごろはまりまくっている金子茂樹脚本作品である「コントが始まる」をコンプリート(泣かされたなあ)、勢いにのって「大河ドラマが生まれた日」まで見てしまいました。

おおようやく大河にたどりついた。

今回はかなり政治的なお話。露骨な勢力争いが二人の女性をまきこんでいく。ひとりはもちろん紫式部(吉高由里子)であり、もうひとりは清少納言である。

え、このなんだか迫力のあるお姉ちゃんは誰?妻も目が点になっている。

ファーストサマーウイカ……全然知らない人でした。元アイドル?オールナイトニッポンのパーソナリティ?すごい人をキャスティングしたんだなあ。かなりリスキーな選択だと思う。藤原道隆(井浦新……ゴールデンカムイでもすごい存在感)の妻を演じた板谷由夏と比べるとわかりやすい。

あの徹底して美形な女優が清少納言を演じたとしたら、紫式部との葛藤は、小さなキャットファイト程度にしか想像できないが、ファーストサマーウイカが相手だと……

古文が苦手だったので、教科書と橋本治の桃尻語訳(春ってあけぼのよっ!)でしか枕草子は読んでいないけれども、これからの展開に期待しよう。

さて、次は「さよならマエストロ」か。ああ、小澤征爾の訃報が。ほんとうの、さよならマエストロになってしまった。

第7回「おかしきことこそ」につづく

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「フェイブルマンズ」The Fabelmans(2022 ユニバーサル)

2024-02-11 | 洋画

アメリカの田舎町で育つ、ユダヤ系の少年。映画に魅せられ、差別にめげながらも映画によって救われていく……

スティーブン・スピルバーグの自伝的作品。彼の映画に刻印されている、スモールタウンの風景、父の不在などがやはり描かれている。

とにかくドラマのテンポがすばらしい。もちろんそれは監督スピルバーグ、撮影ヤヌス・カミンスキー、音楽ジョン・ウィリアムスという鉄壁のチームだから当然のことなのだろうが。映画という芸術に愛された人たちにしかできないですきっと。

現代の映画界で、このリズムを体得している筆頭は、スピルバーグとクリントイーストウッドだ。

その少年サミーは、高校を出て撮影所に仕事を求めに行く。そして、ある巨匠に会えることになる。彼の部屋に入ったサミーは呆然とする。壁には、その巨匠が撮った作品のポスターが貼られている。「駅馬車」「三人の名付け親」「捜索者」「怒りの葡萄」……そう、その巨匠とはジョン・フォードのことだったのだ。

そんな彼を演じているのは……ええええデイヴィッド・リンチなの!?「ツインピークス」「エレファントマン」の監督ですよっ。確かに、フォードに少し似てはいる。

まあ、よく考えたらスピルバーグは「未知との遭遇」ではフランソワ・トリュフォーを科学者役に起用した過去もあるしね(宮崎駿は庵野秀明を「風立ちぬ」で主役に起用している)。

さて、そんなフォードは、サミーに映画づくりのコツをひとつ伝授してくれる。そのコツがラストで……

映画ファンなら思わす唸るラスト。さすがだスピルバーグ

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うまい店ピンポイント 開き直ってますけどなにか?

2024-02-10 | 食・レシピ

PayPay祭り終了篇はこちら

「伍長、中央委員という重責を担いながら、昼食のお弁当をキャンセルし、あろうことかまるぶんまで行き、午後の会議に遅刻するって」

「うまかったからいいの。そういう人なのおれは」

「知ってます」

長く労働組合の役員をやっていると、そういうこともできるようになります。にしてもまるぶんはやっぱりおいしい。行列がしんどいけど。

駐車場にいつも苦労するんだけど、今回は最初からビッグウイングに駐めようと決めてました。人間としてダメ。

ラーメン支出額2年連続全国1位とか。頼むよ、あんまり混むなよ。

春休み何でもあり篇「町田商店」につづく

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史劇を愉しむ その34章「バーフバリ」「バーフバリ2」

2024-02-09 | 洋画

その33章「ベン・ハー」はこちら

RRR」の監督が、もんのすごい金をかけて撮りあげた史劇(なのかな)。ストーリーは典型的な貴種流離譚。面白いのはいいのだけれど、2時間半もかけていきなり主人公の父親の話にシフトするのである。だいじょうぶか……二部作だったんだね。

暑苦しい主人公と、それをとりまく美しい女優たち、これぞインド映画って感じ。象も虎も出てくるし。それにしても、PART2での女王のふるまいは、単にいじわるな姑じゃないの?

第35章「リトル・ブッダ」につづく

コメント (2)
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「豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件」倉知淳著 実業之日本社文庫

2024-02-09 | ミステリ

わははははは。まさしくタイトルどおりの密室殺人を構築してくれました。笑ったなあ。さすが倉知淳

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明細書を見ろ!2024年2月児童手当号 早生まれ。

2024-02-08 | 明細書を見ろ!(事務だより)

児童手当に関して、実は早生まれは不利であることを特集したことがあります。めんどくさい話はすっ飛ばしますが、早生まれの場合は遅生まれよりも手当の受給回数が少ないのです。

というのも、受給はその子が生まれたときから始まりますが、終了は現在「15才の誕生日後の最初の3月31日まで」つまりは中学卒業のときまで。要するに学年ベースなのです。だから3月生まれは同学年の4月生まれよりも11ヶ月分少ないことになります。

話は税金にもかかわります。扶養控除は、その年の12月31日に16才になっている前提でスタート。ですから、遅生まれの場合は高校に入学する年から控除が始まりますが、早生まれはそうはいかない、というわけ。

異次元の少子化対策とか言っている以前に、このような不公平があることを改善してくれないとなあ。もちろんこんな主張をするのは、早生まれのせいで同学年の遅生まれよりも年金支給開始が遅いわたしだからなのですが。

ということで、本日のあなたの受給額は0000円です。

本日の画像は「ミステリと言う勿れ」(2022 フジテレビ)主演:菅田将暉

もじゃもじゃ頭の学生が、その頭脳によって次々に謎を解いていく……原作のマンガを読んだことはないし、大ヒットした劇場版もみていないので、きっとほのぼのしたユーモアミステリだと思っていました。

しかし、登場人物たちは主役も含めて大きなトラウマをかかえていることが多く、意外に重いお話なのでした。しかしそれ以上に、このよくできたドラマを構築した脚本家と、某ドラマの原作者のトラブルで、こっちまで陰鬱な色彩をおびてしまったことがせつない。あ、ちなみに菅田将暉も早生まれです。

2024年6月児童手当号「出生率」につづく

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誕生日

2024-02-08 | 日記・エッセイ・コラム

「あははははは、伍長の娘さんからの誕生日プレゼントは“量”だったんですね」

「たくさんのおめでとうメッセージあざっす」

さあ、今日から3升飲まなくちゃ(笑)

花でいっぱいの日につづく

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「トゥデイズ」長嶋有著 講談社

2024-02-07 | 本と雑誌

静かな日常を描いて、もう長嶋有にかなう人はいない。

“今日”の連なりが日常であることをしみじみと感じさせてくれる。一日、どころか一瞬を切り取って登場人物たちの心を描いて万全。コロナによってわたしたちの生活がいかに歪められたのかを活写した傑作。

そう、わたしたちは歪められたのだ。

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「ジュリーがいた 沢田研二、56年の光芒」島崎今日子著 文藝春秋

2024-02-06 | 芸能ネタ

矢作俊彦原作による大友克洋の傑作マンガ「気分はもう戦争」にこんなくだりがある。ジョン・レノンの死を知った右翼の主人公はこう叫ぶ。

「騒ぐな!たかが毛唐の楽団屋じゃねーか。俺たちにはまだ沢田研二がいる!!」

そう、われわれ日本人にはまだ沢田研二がいるのだ。

この書は、彼の存在が(特に団塊の世代にとって)どのようなものだったかを検証したもの。週刊文春連載の単行本化。

甘い歌声が印象的な彼は、しかしケンカが強く、それでトラブルになったこともある。「魔界転生」でガッツを見せたり、現在も反原発運動に関わるなど、意外な硬骨漢なのである。

離婚したときにほとんどの財産を失い、しかしこの年齢になってから「土を喰らう十二ヶ月」でキネマ旬報主演男優賞を獲得するなど、日本の芸能界で引き続き大きな存在でいる。

そう、引き続きわれわれには沢田研二がいるのである。

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