散歩日記X

札幌を中心に活動しています。食べ歩き・飲み歩き・ギャラリー巡り・読書の記録など

久々の東京出張(5)

2009年01月17日 23時43分25秒 | 飲み歩き・東京
昼食を終え、徒歩で南下して「ブリジストン美術館」へ。今日の特別展示は「都市の表象と心象」と題した、近代パリを描いた版画を中心にしたものだ。



シャルル・メリヨン「シャントル通り」:細い通りに高い建物。その隙間から向こうに高い塔が見える、うまい構図だ。
エドゥアール・マネ「自画像」:背景や手足など、ザザッと描いたところと、緻密な表情。うまくてカッコいい。
オディロン・ルドン「神秘の語らい」:ルドンなんてめったに見られないからなあ。良いもの見ました。

さて、久々の常設展も近代西洋絵画を一望できるという意味で見逃せない。
レンブラント・ファン・レイン「聖書あるいは物語に取材した夜の情景」:小品ながらレンブラントライトが見どころ。
カミーユ・コロー「森の中の若い女」:ちょっとオリエンタルな感じのする、コローらしい女性像。
アルフレッド・シスレー「森へ行く女たち」:白とグレーの空に、建物の屋根が陰になり真っ黒という、色彩感が良い。
クロード・モネ「黄昏、ヴェネツィア」:ほとんど形がなく、色彩のみで表現された作品。「睡蓮」もいいが、評価されていい画だと思う。

ポール・セザンヌ「鉢と牛乳入れ」:岸田劉生、三岸好太郎も描いていた、ブリキコップの登場する静物画。
ポール・ゴーガン「ポン=タヴェン付近の風景」「乾草」:何気ない構図だが、なぜか目が止まってしまう。
青木繁「天平時代」:これも好きだなあ。
ジョルジュ・ルオー「郊外のキリスト」:あまり好きではないルオーだが、この作品は寂しさを感じる名作だ。
モーリス・ド・ヴラマンク「運河船」:30歳頃の作品で、ヴラマンクらしくない明るい色で描かれた印象派的な感じ。佐伯を叱っている場合じゃないだろう。

アンリ・ルソー「イヴリー河岸」:人の大きさがバラバラ、地平線は傾きと「何なんだ!」と言いたくなる画なのだが…
パブロ・ピカソ「腕を組んですわるサルタンバンク」:大体ピカソも好きではないのだが、この上手さを見ると画家は嫉妬するしかないね。
ザオ・ウーキー「07.06.85」:南極の夜を思わせるような白と濃紺。色彩が好きだ。
白髪一雄「観音普堕落浄土」:赤地に赤と青白い曲線を描き、こちらも色彩と動きがあって面白い。

後は、現地からかっぱらって来たとしか思えない「エジプト セクメト神像」の完成された美しさを見て終了。入口にクリスチャン・ダニエル・ラウホの「勝利の女神」という像があるが、これはなかなかの出来ではないか?



この後、銀座に移動し、まずは1・2丁目で、行きそびれた画廊を見る。その後5丁目以南のゾーンへ。

結局今日は、ギャラリー朋→K’sギャラリー→柴田悦子画廊→ギャラリーミハラヤ→シルクロードギャラリー→小林画廊→ノエビアフォトギャラリー→ハウスオブシセイドウ→資生堂ギャラリー→花田美術→秀友画廊→ギャラリーTogeishaの11個所(こちらも感想は別項)。

さてまだ空腹ではないのだが…、どうしても行ってみたかった新橋の「B」へ。



氷のサーバーでを使い、ビール注ぎの達人が供するというビールが飲める店だ。スーパードライ嫌いの私も、あえてスーパードライ生を注文。ヘラで荒い泡を切り捨てるようにして、時間をかけて注ぐビールがやってきた。

どれどれと。うむ、ビールの炭酸がピリピリして持て余す感じがしない。最初っから落ち着いた味わい、しかも気が抜けているわけではないのだ。

食べ物はこれもちょっと厳しいのだが、名物のメンチカツにしよう。しばし待ってやってきたお姿は、楕円形のメンチにたっぷりのソースがかかっている。硬めの衣をナイフで断ち切ると、断面から透明な肉汁が流れ出す。肉のうまみであり、脂のくどさは全然感じない。ソースがなじむに従って、衣の堅さも問題がなくなっていき、切っては食べ切っては食べ。ニンニクの風味がちょっとして、全体にスパイシーなメリハリのある味わいだ。



添えられているのは白菜をゆでたものとポテトサラダ。これもつまみになるため、食べ物は十分だ。もう一杯、黒生をやっつけて、今回はこれで終了。次回来るときは、万全の腹のすき具合でチャレンジしたいものである。

最後の1軒は「gravity」(←意図的に名前を出した)。いつも浜松町に向かう時に立ち寄るバーである。仕事が辛くても(今回は楽だった)、最後にこの店でHさんのカクテルを飲めば、すべてすっきり解消されるのである。

1杯目は今月のカクテルからファジーカミカゼ。ウォッカ+ピーチリキュール+ライムというレシピで、ピーチの香りこそ甘いものの、酸味も効いて強い味だ。2杯目はアクアビット+ストロベリーリキュール+ライムのシーローバーというカクテル。

アクアビットはやはりオールボーが手に入りにくく、ドイツのOLDESLOERというものを使っているとのこと。エキス分たっぷりのストロベリーの甘い味から、最後にアクアビットの香りがしっかり感じられる。



3杯目もアクアビット+イエーガーマイスター+ピコンというすっきり苦味のカクテル。最後に「マティーニ、ドライでなく」というと、エギュヴェル+ロタンという実に珍しい組み合わせでマティーニが作られる。もちろんスィートというわけではないが、通常のマティーニの中では甘さの極北に位置する味わいだろう。

満足しつつも4杯のカクテルでやられて、浜松町へ。コインロッカーの荷物を出し忘れてホームに出てしまうというアクシデント(酔っ払いぶり)をさらけ出しながら、結局23時過ぎに帰宅。

とにかく疲れたが、明日は日曜日で休みだから何とかなるだろう。美術館+ギャラリー・画廊で31個所回ったので、充実の東京出張であった。

久々の東京出張(4)

2009年01月17日 13時32分55秒 | 食べ歩き
今朝も何とか調子は悪くない。朝食付きのプランだったので、8時頃食堂へ。オニオンスープ、味噌汁、ベーコンエッグ、のり、漬物、梅干しで、ご飯を2膳食べる。



味噌汁は朝食にもちろん合うのだが、洋食用であろうオニオンスープが悪くない。塩気と甘味の出たスープが体になじむなあ。

10時ちょっと前にホテルを出て、大門経由(荷物をコインロッカーへ)で、上野へ。

1年以上ぶりに東京に来ると、東京国立博物館にはどうしても行っておきたい。特別展「未来をひらく福沢諭吉展」はパスして、本館と平成館の常設展示を見る。常設展示だけでも正直ぐったり(別項)。

東洋館はパスして、三越前まで移動。三井記念美術館の「国宝雪松図と能面」を見る。



まず第1室は茶道具からだ。

吸江斎「黒楽茶碗 銘三番叟」:漆黒の光を吸い込むような感じ。
野々村仁清「色絵鱗文茶碗」;三角形の文が茶碗のまわりに色付けされており、この辺の遊びが仁清らしいところだ。

第2室に重文「黒楽茶碗 銘俊寛」があったが、私の好みでは1室の方がよかった。続いて第4室が問題の国宝である。

鳥居清長「駿河町越後屋正月風景図」:今の三井・三越の所在地と、遠くに富士山が見える正月らしい風景。
山口素絢「雪中松に鹿図屏風」:鹿はシリアス、松はミニマルアートというか、奇妙に単純化された図形のようだ。

円山応挙「雪松図屏風」:太い松と細い松が、屏風の右上と左下を中心に配置され、間に空白があるという基本的な配置。どちらかというと奇抜さのない平凡な図案とも思えるが、やはり画になるというか目が吸い寄せられる。
同「梅花双鶴図小襖」:こちらは紅梅が華やか。
同「竹図風炉先屏風」:金地に黒でシンプルな竹を書いた屏風。タイプの違う3作でそれぞれ応挙を堪能することができた。

それから今回の目玉だったのが、一気にすべて重文に指定された「旧金剛壮家伝来能面」54面である。能面ってあまり興味がないなあと思っていたのだが、54面も一度に見ると、微妙な顔の違いがあるもので実に面白い。解説により、ある役だけに使われる「専用面」と、一般的に神様や武将、老人を表す面があることも知り、とにかく面白かった。

ここら辺で昼食にしておこう。夕方の予定もあるので、軽めにしておこうと思っていたのだが、クラシックな洋食「T」で、「名物」と記述してある結構重厚な昼食にしてしまった。そのメニュー名が「ドイツ風ライス」。ほら、気になる名前でしょ。



気になるその正体は、ひき肉などの入ったケチャップライスをベースに、その上にマッシュルームとチーズのオムレツを乗せ、さらにドミグラスソースがかかっているものだった。これだけ聞くとくどそうな料理を想像するかもしれないが、ご飯の量が程々だったので、無理はなく食べられた。残念なのはドリアのような熱さを期待していたのだが、それ程ではなかったことだ。