写真の魚は一見、「メダカ」にそっくりですが、別種で、カダヤシGambusia affinis (Baird and Girard, 1853) という魚です。ダツ目・メダカ科に含まれる「メダカ」とは、目の時点で異なる魚で、カダヤシ目に含まれます。
カダヤシは都会近郊の河川などで普通に見ることができる小魚ですが、この種類はもともとアメリカからメキシコの大西洋にそそぐ河川に生息していましたが、ボウフラ駆除のために日本に持ち込まれて福島県以南の太平洋岸にそそぐ河川に定着、在来のメダカ属魚類にも悪い影響を与えることになりました。
上の写真の個体は雄で、臀鰭の一部が変形した交尾器を有し、文字通り「交尾」します。卵胎生で雌は仔魚を300匹ほどの仔魚を産みます。卵の期間がないため、捕食されにくく、その点は「メダカ」と異なるところでしょう。「メダカ」よりも高度な繁殖戦略をとっているといえそうです。
こちらは雌。雌は臀鰭の形状がとくに変わっておらず、「メダカ」にも似ていますが、臀鰭がやや前方にあり、また基底も短いです。魚類検索によりますと、カダヤシは臀鰭軟条数8~10、「メダカ」では14~21であるので、この形質でも区別できます。また体はカダヤシの方が「メダカ」と比べると太いような気がします。
魚類検索に掲載されている日本産のカダヤシ科魚類は5種類が知られており、すべて国外外来種です。グリーンソードテールのように、明らかに鑑賞魚として利用された個体の放逐によるものと考えられるものもあります。カダヤシは現在、俗にいう「外来生物法」の「特定外来生物」に指定され、無許可での飼育や運搬などが出来なくなりました。したがって、本種を採集してしまった場合には、再度その河川に放流するか、その場で締めて持ち帰らなければならないようですが、前のパターンではいつまでたっても減らないでしょうから後者がよいように思われるものの、それでも罪のない魚を「外来だから」という理由で殺すのは抵抗があるのは事実です。このほかにも近いうち特定外来生物に指定されるかもしれないアカミミガメやアメリカザリガニなどにも同じことがいえます。この辺どうにかならないでしょうか?
しかしその前に、観賞魚愛好家が観賞魚を河川に放すのは悪質な行為であり、それが特定外来生物の指定種の幅を広げることになるかもしれません。マスメディア等も外来の熱帯魚が放されている東京の河川を「タマゾン」などと呼んで、茶化すレベルではないことを理解しておかなければなりません。観賞魚愛好家一人ひとりのモラルが問われています。