愛知県の魚のシリーズ。今回はミシマオコゼ科・ミシマオコゼ属のキビレミシマ。
これにより日本産ミシマオコゼ属の6種のうち5種をこのぶろぐでご紹介したことになる。ミシマオコゼ属は日本にキビレミシマ、ミシマオコゼ、メガネウオ、ヤギミシマ、カスリミシマ、トウカイミシマの6種いる。カスリミシマはこのぶろぐで紹介した当時は独自属とされたが、現在はミシマオコゼ属のものとされている。トウカイミシマの方はなかなかの曲者で東シナ海でしか見られない。門川の魚図鑑に掲載されたトウカイミシマはおそらく違う種のように思う(キビレミシマかもしれない)。残念ながら以西の乗組員になるしか入手する方法はなさそうである。このぶろぐで紹介できていないもう1種のサツオミシマは瀬戸内海などでも漁獲されることがあるため、まだ入手は可能と思われる。
ミシマオコゼ
宇和海の沖合底曳網ではキビレミシマは見たことがなく、入る個体はミシマオコゼであった。一方キビレミシマは山口などで漁獲されたものを譲ってもらっていた。瀬戸内海ではミシマオコゼよりもキビレミシマが多かった。キビレミシマのタイプ標本は学名Uranoscopus chinensisからもお分かりのように中国で採集されている。中国の大陸棚に多い魚なのだろうか。底曳網の魚もたくさん見てきたが、大体がミシマオコゼであった。
●キビレミシマとミシマオコゼの見分け方
大分県の下河原 浩介さんより、ミシマオコゼとキビレミシマの見分けのリクエストがあったので、ここでご紹介。
ミシマオコゼ属の胸鰭
上はキビレミシマ、下はミシマオコゼの胸鰭である。ミシマオコゼの胸鰭は上方が強く凹むが、キビレミシマはあまり凹まない。写真しかない場合にこの2種を見分けるのであればこれがベストか。写真は胸鰭が乾燥してしまっているためわかりにくいかもしれないが。
キビレミシマの前鰓蓋下縁。棘4つ。
キビレミシマ。遠くから見ると5本、赤いのは主鰓蓋骨(か間鰓蓋骨)のものなので含めない
ミシマオコゼの前鰓蓋骨下縁
前鰓蓋下縁に棘が3つあるのがミシマオコゼ、4つあるのはキビレミシマ(トウカイミシマは通常5つ)。重要なのはあくまで「前鰓蓋骨の棘の数を数える」こと。赤い矢印は前鰓蓋骨の棘ではないので含めない。胸鰭の形状と前鰓蓋骨下縁、これらの二つの要素で見分けるのがわかりやすいだろう。キビレミシマは胸鰭や尾鰭が黄色っぽくなるが、ミシマオコゼなども薄いが黄色っぽくなるので、これだけで見分けるのはちょっと危険かもしれない。
ミシマオコゼの仲間はこれまでも述べてきたが、薄造りにして食べると非常に美味である。この個体も美味しくいただくことができた(写真で2匹分)。なお写真には写していないが肝や卵なども食用にすることができ、これらも美味しい。
なお今回入手したキビレミシマも愛知県 項明水産 鈴木項太さんより。いつもありがとうございます。前回「愛知県の魚の紹介はとりあえず次で最後の予定」と書いたが次こそ最後にします。よろしくお願いいたします。