創作日記&作品集

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物語のかけら8第二部

2007-04-19 22:52:55 | 創作日記
イローナ「鏡の部屋に閉じこめられた。私の回りは、みんな私。私が笑えば、無数の私も一緒に笑う。私が泣けば、無数の私が、みんな一緒に泣く。どの私が一体、本当の私なの。ここは狭い部屋だと思う。だけど、行けども行けども何処にもたどり着けない。優!」
鏡の中に黒い服を着た子供が現れた。子供だと思ったが小さな女だった。左手に赤い液体が入ったグラスを持っていた。イローナが振り返る。
「王妃様がお呼びだよ。さあ、これをお飲み」
女は笑いながら言った。
野卑な男の声がする。薄汚れた兵士が、笑いながら入ってくる。突然、イローナの服を引き裂く。誰かがイローナを羽交い絞めにした。
女「口をお開け」
イローナ「いやです」
次々に兵士が入ってきた。鏡の中は無数の兵士で埋まった。
女「みんなこの女を好きにしていいよ」
イローナ「やめて」
女「それなら、これをお飲み」
イローナがうなづく。
女「いい子だ初めからそうすればいいのに」
一瞬にして兵士の姿が消えた。
女「今、お前が見た兵士はこれだよ」
女は松葉を地面に落とした。
女「あたしは魔法使いなんだよ。そして、王妃様の忠実なしもべ」
イローナの目の前にグラスを差し出す。
老婆「素直になれば、いいんだよ。おいしいよ。70種類の薬草を調合して、最後に私の血を加えた。さあ、お飲み」
赤い液体は甘い。とても、とても、とても、…。イローナは深い闇の中に落ちて行った。