創作日記&作品集

作品集は左のブックマークから入って下さい。日記には小説、俳句、映画、舞台、読書、など…。そして、枕草子。

物語のかけら 最終章 2

2007-04-25 21:06:25 | 創作日記
アーシアが星空を仰ぎながら、歌い始めました。言葉が戻ってきたのです。いつの間にか、沢山な遊牧の人がアーシアの周りに集まってきました。アーシアの歌を聴きながら、星空を仰ぎ、少し遅れてアーシアの声を追います。子ども達は、そんな大人たちの間を走り回ります。もっと小さな子どは、キャツキャと笑ったり、泣きわめいたり、とても、にぎやかです。名前も知らない動物が、アーシアに近づいて、顔をぺろりと舐めます。アーシアの顔から笑みが零れます。私は一足先に眠ります。もう、明日がこなくても。それはそれでいい。

物語のかけら 最終章 1

2007-04-25 21:04:42 | 創作日記
石泥棒さん、そろそろ約束の三月が経ちますね。あなたの名前も知らない。でも、あなたはそこにいる。確信しています。アーシアの目に光が戻りました。私を見つめているのです。アーシアは少しずつ失ったものを取り戻しているのです。少しずつ。私たちは遊牧民と旅をしています。彼らが連れているのは、きっと、あなたの知らない動物です。牛でも馬でも羊でもラクダでもない。とてもおとなしい動物です。枯草を食べても、生きていけます。牡は三年たてば、売られていきます。残ったものも、私達や遊牧民に食べられます。牝は一年に一頭の子供を産みます。十回産めば、雄と一緒に売られていきます。遊牧の人はみんなとても親切です。言葉は通じませんが、心は通じ合います。