創作日記&作品集

作品集は左のブックマークから入って下さい。日記には小説、俳句、映画、舞台、読書、など…。そして、枕草子。

物語のかけら10第二部

2007-04-23 21:53:59 | 創作日記
「誰か来て」二人の王妃は声を合わせて叫んだ。楽しそうに。舞台で演じる役者のように。
「王様!、王様!、王様!」
優は言った。
「あなた方はかわいそうな人だ」
そして続けた。
「いつも一人だ」
「一人でいけないの?」
「人はいつも一人よ」
「私以外誰もいないよ。生きるのも一人、死ぬのも一人」
「でも、一人でも、人を愛することはできる」
「そうね、確かに」
「でも、やっぱり一人」
「僕も一人が好きだった。たけど…」
「だけど?」
「僕が死んだとき、泣いてくれる人がいたら、いいなと思う」
「馬鹿みたい」
「誰?あなたは?」
「黄色い人?」
「こんな人にかまわずにお芝居を続けましょ」
「でも、意外ね。2人で一緒に幻を見るなんて」
「おもしろいね。狂っている分だけ一緒なのかも」

物語のかけら9 第二部

2007-04-23 16:37:50 | 創作日記
王が眠る寝室に二人の王妃が入ってきた。一人がランプをかざすと、もう一人の王妃が王の顔を指差した。
王妃1「この男がいなくなれば、私たちは昔のように仲良く暮らせる」
王妃2「愛なんて信じないわ、ねぇ、お姉様。きっと、誰かが言った冗談よ。私はいつも1人」
王妃1「そっくりでも、1人」
王妃2「そっくりだから、1人なの。お姉さまは鏡の中の私」
王妃1「あなたこそ、鏡の中の私」
王妃2「あなたが、私の影なの」
王妃1「私の影はあなたよ」
王妃2「どっちでも同じ」
王妃1「いやよ、わたしがあなたの影だなんて」
王妃2が王のベットに近づく。
王妃2「でも、お姉さまが愛を信じるなら、この男はジャンマ」
王妃1「(鏡に向かって声を潜めて)イローナ」
鏡の中から自失したイローナが現れる。片手に、短刀を下げている。
王妃2「何人も人を殺して、お帰りになったばかり、死んだように眠っていらっしゃる。簡単よ、一気に刺しなさい」
王妃1「帰れるのよ、あなたのお家に。帰りたいんでしょ。帰してあげる。さあ、殺して」
王妃2「天井に届くまで血しぶきをあげて。馬鹿な男は、美しいもののために死ぬの」
イローナが両手で握った短刀を振り上げる。鏡の中から優が現れる。
「イローナ!」優が叫ぶ。
イローナが短刀を振り下ろす。その間に、優が立つ。短刀は、ゆっくりと優の身体を通り抜け、王の胸に刺さる。
王の胸が血に染まっていく。