ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2010.12.21 益川先生がやってきた!

2010-12-21 21:34:32 | 日記
 今日は2008年ノーベル物理学賞を受賞した益川敏英先生の講演会「現代科学と社会」を聴くことができた。

 2年前の受賞後のいろいろなインタビューを見ながら、本当に研究者らしい研究者で、チャーミングな方だなあ・・・とずっと隠れファンだったので、こんな機会があって本当に嬉しい。

 なんといっても私は物理には暗い想い出しかない。通っていた高校は理系重視の学校だったので、文系でも物理・化学・生物・地学の4教科に結構がっちり取り組まされた記憶がある。物理はペーパーテストでは壊滅的に出来が悪かった(もう時効なので白状してしまうけれど、一度は100点満点のテストで合計点なのか部分点なのかわからない数字が一つ書いてあって、思わず「これは・・・?」と聞きに行こうかと思った・・・、というトホホなこともあった。)。
 そんなわけで、今でも物理学を研究している、などという先生には(数学もそうだけれど)畏敬の念でご尊顔を仰ぎ見てしまう、という情けない私である。
 それでも、当時は単位を落とさないために必死で推奨図書を数冊読んでレポートを書きあげ、なんとか救ってもらった。ファラデーの「ろうそくの科学」等は結構興味深く読んだ。なのに、なぜ試験はあんなにできなかったのだろう・・・・。

 それはさておき、今日の講演会。「あの益川先生がやってくる!!!」ということで最寄駅や学内には大きなポスターが沢山貼られている。学外の方もご参加頂けます、ということで、 開場して5分ほどで到着したのだが、もう殆どの席が埋まっており、なんともったいなくも1番前のかぶりつきの席しか空いていなかった。来賓席の近くで恥ずかしかったけれど、立って聞く体力もなく、遠慮なく腰かけた。途中一般からの聴講者がかなりの数に上り、二階席までぎっしり。学生は一般の方に席を譲るように、とのアナウンスまで流れた。

 1時間の講演予定が20分ほど延長し、さらに2人の学生と一般の方1人からの質問にも答えて頂いた後、講演会は満場の拍手の中、お開きになった。

 それにしてもテレビで拝見していたとおりのキュートな方。いろいろなエピソードを交えつつ、ジョークも満載、しかも専門的な(私にはちょっとついていけない・・・)お話が聞けた。
 冒頭、学長が挨拶でウィキペディアによる益川先生の語学についての紹介をされたことから、「英語は喋れるに越したことはない、自分はギリギリ日本語だけで生き残れた。」とおっしゃり、「ノーベル賞の授賞式で身につけているのはモーニングに見えるが、正式にはモーニングコートなので、殆ど全員が貸衣装であり、どんなサイズにも対応出来るから、(ノーベル賞を取ったら、授賞式に着るモーニングコートをあつらえなければ・・・などと)服装のことに気を取られずに学問に励むように。」とお話された後、本題へ。
 自由とは「必然性の洞察」とした法哲学者ヘーゲルの話から始まり、昆虫学者ファーブルが興味津々に見守る中、細菌学者パスツールがカイコのタバコモザイク病を撲滅したエピソードを紹介し、「科学とは人類により多くの自由を準備するもの(与えるものではない)」と定義された。基礎的なものを知っていれば、より広範な応用例があるのだ、と。しかし、基礎科学の適用性は広く、それほど単純なものでもないこと、科学の基礎的な法則は人類社会に貢献するものである、と。
 「肯定のための否定の作業」の果てに真理が生まれるが、1つの分野の論理に習熟するだけでなく、もう一つ性質の違うものを理解することで(全ての分野を1人で極めるのは無理なので)、すなわち1.5の分野を理解することで信じていい事実かどうか、汎用性の見極めができるようになる、などなど。
 まだまだお話は溢れ出てきそうだったけれど、強引にまとめて頂いた感じ。

 質疑応答では、ノーベル賞は狙って取るものではなく、そのために学問を選ぶことは邪道である。注意深く自然と接していればチャンスはある。ご自身の変化としては受賞後、あたりが騒がしくなり、2年経ってもいまだ忙しいが、これは自分の漫才キャラにもよるのでしょう、とのこと。留学希望者が減少していることは危機的なことで、科学をやる上ではもっとハングリー精神が必要である、と結ばれた。

 ノーベル賞を取りたい、と意気盛んに質問した学生がいたけれど、ああ、輝ける未来があって本当に羨ましい。とりあえず今の私は近い将来を少しでも長く有意義なものにするために、明日も治療に行かなくては。

 10年以上勤めていてもなかなかこんな機会はないけれど、大学からの一足早いクリスマスプレゼントに心がほっこり温かくなった。

 さて、年賀状の準備は順調だったが、クリスマスカードの手配をしていなかった。
 昨日、第1通目がスウェーデンから届いてしまった。ストックホルムでの訪問先をコーディネイトしてくださったた方。お目にかかってからかれこれ16年にもなるのにこうしてクリスマスカードだけはやり取りさせて頂いている。既に退職されて毎年海外旅行を楽しんでいるご様子。去年はアフリカのライオンをバックに、今年はインドのタジマハールをバックのクリスマスカードだった。体調も心配して頂き、有り難い。ああ、やはりもう一度北欧に行きたい、と改めて思いつつ、あわててお返事を書き始める次第である。
コメント
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