ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2011.6.6 手書きの効用

2011-06-06 18:58:32 | 日記
 「6月6日に雨ザーザー降ってきて・・♪」などという可愛い手書き歌があったが、今年の6月6日、今日はいいお天気。からりと晴れて梅雨の晴れ間になった。

 朝日新聞の「天声人語」が好きで、学生時代からずっと愛読している。 昔から書くことが好きだったので一時マスコミ関係に就職出来たら、と考えたこともあったから、こんなコラムが書けたら・・・という憧れでもあった。短い文章で本当に毎朝唸らせられるので、素直に凄い、と思う。当然ながら、代々書き手は変わっているけれど、実に由緒正しいコラムであると感じている。
 さて、今日のものもなるほど・・・と思ったので、以下に転載させて頂く。

※  ※  ※(転載開始)

天声人語 2011年6月6日

声欄に載る投書に、思わず背筋の伸びることがある。それでは足りず頭(こうべ)まで垂れたくなる一文を、先月の大阪本社版で読んだ。2年前に他界された奥さんが、10年以上にわたって小欄を書き写してくださっていた、という内容だった▼京都の大石治さん(77)のお宅には、丁寧な字で埋まったノートが27冊も残る。毎晩、就寝前の30分を充てておられたという。筆写につれて、日記の文章が無駄なく上手になっていくのにご主人は驚いたそうだ。宝物にしたいようなありがたい話である▼パソコンにおされて手書き文化はたそがれつつある。そうした中、多くの方が小欄を筆写してくださっているのを知った。専用の書き写しノートを発売したところ、面映(おもは)ゆくも好評らしい。筆者としては、日々の出来不出来がいっそう気にかかる▼自由律の俳人尾崎放哉(ほうさい)の一句、〈心をまとめる鉛筆とがらす〉が胸に浮かぶ。何も小欄に限らない。文を書き写す時間には、ゆたかな静謐(せいひつ)があるように思う。キーボードでは得られない「手と心」の一体感だろうか▼写真のなかった昔、人をしのぶよすがは肉筆だった。「平家物語」にも「はかなき筆の跡こそ後の世までの形見」とある。なのに昨今は、職場でも互いの手跡を知らない同僚が増えている▼日ごろの「パソコン頼み」を反省し、この原稿は鉛筆をとがらせ、マス目の書き写しノートに書いてみた。恥ずかしながら5枚も反古(ほご)にした。さて出来不出来は。採点はどうか、お手柔らかに願います。

(転載終了)※  ※  ※

 こうして日々書いているブログは当然パソコン頼みである。あわせて日々の日記も、今や昨年のものに上書きしながら、去年の今日は・・・と思い出しつつ、パソコン入力していることも過日書いたとおりだ。削除したり順序を入れ替えたり、がいとも簡単にできるワープロやパソコンは、今やなくてはならないもの。書類を作るのも考えるのもキーボードの上で、が至極日常のことになった。かつて手書きで消したり書いたりしていたのが本当に遠い昔に感じる。

 それでも、手書きの文字や手紙には得も言われぬ味があるし、その人の人となり、息遣いが直に伝わってくるものだ。だから、職場でも互いの手跡を知らない同僚が増えているという記載には膝を打った。かつてはちょっとしたメモ等を見れば誰の字かすぐに当てることが出来たのに・・・と思う。
 そして年賀状は印刷発注しても、せめて宛名書きだけは手書きで、と思っていたが、今ではそれさえも印刷にさせて頂いてから早くも数年が経っている。が、やはり一言手書き文字を書き足すことは、その人のことを思い浮かべながら、一言書く時間を大切にしたい、という思いから死守している。

 確かに手書きで筆写する時間は、心豊かで静謐な時間である。心穏やかに落ち着いてきちんと自分と向き合わなければ、正しく美しく書き写すことは出来ない。私も大昔に書道を習っていたことがあった。墨汁を使ってしまえばすぐに書くことが出来たけれど、延々と墨を磨る時間が、どこか無心になれて好きだった。

 息子も小学生時代にはお習字教室に通わせていた。1週間に1度、ごく僅かな時間だったけれど、正座をして心静かに字を習うことは、彼にとって大切な時間だったのだ、と改めて思う。受験間際にいったんお休みし、中学入学後、是非またお世話になりたいと考えていたけれど、結局、生徒さんが少なくなり教室自体なくなってしまい、今でもとても残念に思っている。今の彼の字を見ると、お習字を習っていた、などという片鱗すら感じられない・・・というのがいかにも哀しい。

 それはそうと、天声人語専用の書き写しノートがあるという。全く知らなかった。探して、書いてみようかな・・・と思っている。

 さて、月曜日。すっかり体調も元に戻り、お天気の後押しもあり、快調だ。新しい1週間。ここ数日は爽やかな晴れの日が続きそうで、嬉しい。


コメント
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