昨日の通院日のこと。
いつものように中待合で本を読みながら待っていると、私の前の患者さんが廊下に出ていらした。(あ、次だ)と思って荷物をまとめた。普段なら、その後まもなく先生から呼ばれるのだが、先生も後処理やもろもろの連絡があったようで、なかなか呼ばれない。
じろじろ観察するつもりは全くなかったのだが、出てこられた患者さんは私の隣にお座りになった。バンダナ姿。お化粧はきちんとしておられるが、頭髪、眉も完全に脱毛されているのがうかがえる。そして、手元。どの指も痛々しい絆創膏だらけで、かろうじて絆創膏をしていない手の爪は黒く変色し浮き上がっておられる。かつての自分を思い出して、胸が痛くなった。
そこへ、看護師さんが「それでは皮膚科にいきましょう。」とお迎えに来ていた。患者さんは私より大分年配で70代前半くらい、とお見受けしたが、「ちょっと爪をひっかけるだけで、剥がれてしまいそうで・・・」と心配そうに訴えておられた。これまたかつての自分と同じ。私もペナペナになった爪の保護のためにドレニゾンテープを貼ったら、それを剥がす時に一緒に爪が剥がれてしまった苦い記憶がある。そのくらい爪のダメージは大きかった。それでもいつも白手袋をしていては細かい作業等何も出来なくなる。水仕事をすれば、絆創膏はどうしても剥がれてしまう。私はタキソテールの副作用だったが、この方は何の薬だろう。おそらく同じなのではないか、と思った。それにしても大きい病院の中で複数科受診は大変だ。待ち時間がダブルトリプルになると本当に憔悴する。うまくコントロール出来ますように、とひそかに祈った。
看護師さんと彼女が皮膚科に向かってほどなくして、私は診察室に入った。そして診察後、化学療法室へ移動。
点滴椅子に座って少ししたところで、いきなり荒々しい声が聞こえた。男性の声。感じからすると60代か70代か(職場でも世間でもどこでも、気付けばもう結構な年配である私だが、こと病院に来るとまだまだひよっこの部類なのだ。)。「薬、まだなのかなあ?いつもいつもぐずぐずモタモタして本当に遅いんだよね、待ち時間で疲れちゃうんだよ!」と容赦ない。投薬中の寝息以外はしーんとしている化学療法室内に響き渡る。そして緊張感と居心地の悪さが走る。
看護師さんが「ごめんなさいね。もう少しですから・・・すみません。」と謝っておられる声が聞こえる。
インフルエンザ等既成の簡単な注射ならまだしも、ここに来る患者さんが投与される注射や点滴は其々がオーダーメイドだから、診察後、先生が薬剤部にリクエストを出して初めて調剤が始まる(事前に準備をした場合、当日体調不良等で治療中止の判断が出た時、高価な薬が丸ごと無駄になってしまう。)。薬剤部で何重ものチェックを重ねて、化学療法室に届くまで小1時間はかかる。朝、受付をしてから診察室に呼ばれるまで1時間(採血等があればさらにその所要時間と、結果が分かるまでの最低1時間が加わる。)、化学療法室で点滴椅子に座れるまでに早くて15分、空きがないとそれ以上、そして薬が届くまでの時間を足すと、病院に入って、検査等がなく、すんなりいっても注射や点滴をしてもらえるのに最短で2時間以上かかる。
待ち時間で疲れる、というのは本当にそうだ。だから、点滴椅子を確保して寝てしまえるまでは本を持っていったり、いろいろ時間潰しのツールが必要になるわけだ。
気持ちはよーく分かる。病院に通っているのだから、元気ハツラツ!であるわけがない。それでも、少しでも良くなるために待ち時間覚悟で、大枚をはたくことを覚悟で、其々体に鞭打って病院に通ってきているわけだ。けれど、そうして声を荒らげてみたところで、薬が届くのが早くなるわけではない。複数の看護師さんたちが沢山の患者さんを相手にしている。一人一人違う薬を間違えたりしたら、それこそ大ごとだから、細心の注意をしながらダブルチェックを重ねて、ようやく私たち患者のもとへ正しい薬を届けてくれる。だからこそ、そんな時に、こんなふうに声に出して言ってみてしまうことがお互いのためになるとは決して思えない。
それから30分ほどしただろうか、今度は同じ方の明るい声で、「どうもありがとうね~」が、聞こえた。
(ああ、無事に薬が届いて終わったんだ。あまり長い点滴ではなかったのだな)と判った。私などのように点滴時間が2時間(かつて一番長い時は4時間半ということもあった。)以上かかるならあきらめもつくけれど、確かに30分もかからない点滴で、延々と待たされるとそれこそ気持ちがささくれだってしまうのかな、と思う。
それでも、せっかくそんなふうに御礼が言えるのだから、ぐっと堪えてほしいな、と思った。なぜって、あなたの娘さん世代よりもっと若い看護師さんたちが、こんなに一生懸命働いてくれているのだから。終わりよければすべて良し、かもしれないけれど・・・。
つくづく賢い患者になりたい、と思う。人間と人間とのこと、主治医や看護師さんたちとの関係をうまく繋げていくことは、ひいては治療もうまくいくように思えてならない。
さて、今日の体調だが、朝、予定通りのイメンド80mgとロキソニン、マグラックスを飲む。昨夜はマイスリーのお世話にならずとも5時間は連続してしっかり眠れた。朝食もゆっくり時間をかけて、用意したものはお腹に入れられた。お昼前にマグラックス効果で珍しく無事にお通じがあった。昼、やはり気持ち悪さが出てきている。それでも午後の会議等に備えてなんとか昼食をお腹に入れて、ロキソニンを飲んだ。マグラックスはひとまず中止。午後になると、お腹の中をぐちゃぐちゃとかき混ぜられる感じがある。夕方、火照りも出てきた。
結局、今日ももろもろ立て込んでしまい、定時には帰れず仕舞い。大急ぎで作った夕食を夫と息子が美味しそうにパクつく姿が何ともうっとうしい。さすがに空腹でロキソニンを飲むといきなり胃が荒れてしまうので、最小限に。
副作用はあと1日半の辛抱・・・だ。
いつものように中待合で本を読みながら待っていると、私の前の患者さんが廊下に出ていらした。(あ、次だ)と思って荷物をまとめた。普段なら、その後まもなく先生から呼ばれるのだが、先生も後処理やもろもろの連絡があったようで、なかなか呼ばれない。
じろじろ観察するつもりは全くなかったのだが、出てこられた患者さんは私の隣にお座りになった。バンダナ姿。お化粧はきちんとしておられるが、頭髪、眉も完全に脱毛されているのがうかがえる。そして、手元。どの指も痛々しい絆創膏だらけで、かろうじて絆創膏をしていない手の爪は黒く変色し浮き上がっておられる。かつての自分を思い出して、胸が痛くなった。
そこへ、看護師さんが「それでは皮膚科にいきましょう。」とお迎えに来ていた。患者さんは私より大分年配で70代前半くらい、とお見受けしたが、「ちょっと爪をひっかけるだけで、剥がれてしまいそうで・・・」と心配そうに訴えておられた。これまたかつての自分と同じ。私もペナペナになった爪の保護のためにドレニゾンテープを貼ったら、それを剥がす時に一緒に爪が剥がれてしまった苦い記憶がある。そのくらい爪のダメージは大きかった。それでもいつも白手袋をしていては細かい作業等何も出来なくなる。水仕事をすれば、絆創膏はどうしても剥がれてしまう。私はタキソテールの副作用だったが、この方は何の薬だろう。おそらく同じなのではないか、と思った。それにしても大きい病院の中で複数科受診は大変だ。待ち時間がダブルトリプルになると本当に憔悴する。うまくコントロール出来ますように、とひそかに祈った。
看護師さんと彼女が皮膚科に向かってほどなくして、私は診察室に入った。そして診察後、化学療法室へ移動。
点滴椅子に座って少ししたところで、いきなり荒々しい声が聞こえた。男性の声。感じからすると60代か70代か(職場でも世間でもどこでも、気付けばもう結構な年配である私だが、こと病院に来るとまだまだひよっこの部類なのだ。)。「薬、まだなのかなあ?いつもいつもぐずぐずモタモタして本当に遅いんだよね、待ち時間で疲れちゃうんだよ!」と容赦ない。投薬中の寝息以外はしーんとしている化学療法室内に響き渡る。そして緊張感と居心地の悪さが走る。
看護師さんが「ごめんなさいね。もう少しですから・・・すみません。」と謝っておられる声が聞こえる。
インフルエンザ等既成の簡単な注射ならまだしも、ここに来る患者さんが投与される注射や点滴は其々がオーダーメイドだから、診察後、先生が薬剤部にリクエストを出して初めて調剤が始まる(事前に準備をした場合、当日体調不良等で治療中止の判断が出た時、高価な薬が丸ごと無駄になってしまう。)。薬剤部で何重ものチェックを重ねて、化学療法室に届くまで小1時間はかかる。朝、受付をしてから診察室に呼ばれるまで1時間(採血等があればさらにその所要時間と、結果が分かるまでの最低1時間が加わる。)、化学療法室で点滴椅子に座れるまでに早くて15分、空きがないとそれ以上、そして薬が届くまでの時間を足すと、病院に入って、検査等がなく、すんなりいっても注射や点滴をしてもらえるのに最短で2時間以上かかる。
待ち時間で疲れる、というのは本当にそうだ。だから、点滴椅子を確保して寝てしまえるまでは本を持っていったり、いろいろ時間潰しのツールが必要になるわけだ。
気持ちはよーく分かる。病院に通っているのだから、元気ハツラツ!であるわけがない。それでも、少しでも良くなるために待ち時間覚悟で、大枚をはたくことを覚悟で、其々体に鞭打って病院に通ってきているわけだ。けれど、そうして声を荒らげてみたところで、薬が届くのが早くなるわけではない。複数の看護師さんたちが沢山の患者さんを相手にしている。一人一人違う薬を間違えたりしたら、それこそ大ごとだから、細心の注意をしながらダブルチェックを重ねて、ようやく私たち患者のもとへ正しい薬を届けてくれる。だからこそ、そんな時に、こんなふうに声に出して言ってみてしまうことがお互いのためになるとは決して思えない。
それから30分ほどしただろうか、今度は同じ方の明るい声で、「どうもありがとうね~」が、聞こえた。
(ああ、無事に薬が届いて終わったんだ。あまり長い点滴ではなかったのだな)と判った。私などのように点滴時間が2時間(かつて一番長い時は4時間半ということもあった。)以上かかるならあきらめもつくけれど、確かに30分もかからない点滴で、延々と待たされるとそれこそ気持ちがささくれだってしまうのかな、と思う。
それでも、せっかくそんなふうに御礼が言えるのだから、ぐっと堪えてほしいな、と思った。なぜって、あなたの娘さん世代よりもっと若い看護師さんたちが、こんなに一生懸命働いてくれているのだから。終わりよければすべて良し、かもしれないけれど・・・。
つくづく賢い患者になりたい、と思う。人間と人間とのこと、主治医や看護師さんたちとの関係をうまく繋げていくことは、ひいては治療もうまくいくように思えてならない。
さて、今日の体調だが、朝、予定通りのイメンド80mgとロキソニン、マグラックスを飲む。昨夜はマイスリーのお世話にならずとも5時間は連続してしっかり眠れた。朝食もゆっくり時間をかけて、用意したものはお腹に入れられた。お昼前にマグラックス効果で珍しく無事にお通じがあった。昼、やはり気持ち悪さが出てきている。それでも午後の会議等に備えてなんとか昼食をお腹に入れて、ロキソニンを飲んだ。マグラックスはひとまず中止。午後になると、お腹の中をぐちゃぐちゃとかき混ぜられる感じがある。夕方、火照りも出てきた。
結局、今日ももろもろ立て込んでしまい、定時には帰れず仕舞い。大急ぎで作った夕食を夫と息子が美味しそうにパクつく姿が何ともうっとうしい。さすがに空腹でロキソニンを飲むといきなり胃が荒れてしまうので、最小限に。
副作用はあと1日半の辛抱・・・だ。