2019年1月10日(木)
神保町の地下鉄を降り、漱石も通ったという錦華小学校へ向う曲がり角にAという古書店があり、主に囲碁・将棋関係を商っている。数年前のこと、カタコトながら十分通じる日本語を操る白人が、藤沢秀行の打碁全集を数十万円ポンと払って買って行くのを、この店で目撃した。古本屋街、裏通りの異次元である。
今日はささやかな狙いあり、『ツケの魔力』という小冊子がないかと期待した。囲碁の手筋は無尽蔵だが、中でもツケというのはイヤらしくもカッコいい。面と向かって対陣のさなかに、長い手を回して後ろ頭を叩(はた)くような意表の衝き方、ダメを詰めるねちっこさは叩くというより、急所をグイと掴む感じか、何しろ手筋の粋という感じがする。
今は絶版の好著である。もともとの定価750円がAmazonではいちばん安くて2,030円、もう少し安く手に入らないかという魂胆。入口の壁際に山と積み上げられた古書の中に、あった、ありましたよ。カバーは汚れているが紙面は問題ない、売価は1,000円ちょうどとある。手にした1分後には支払い済ませて店を出た。180問ほどの問題形式で、特に最後の25問は古今の棋譜からの好手抜粋である。古くは江戸時代初期の碁聖・道策から現在活躍中の棋士まで綺羅星の行列だ。先週、名人戦リーグ井山・六浦戦中盤に現れた井山のツケなども思い出しながら、ワクワク頁をめくっていく。
と、出ました、天才・宮澤吾朗の目の覚めるようなツケ2発!
← 黒番、右辺を大きくえぐる | 白番、外から利かして外勢の柱石にする →
見ているだけで胸がすく。こんな手が打てたら負けたっていいんだが、こんな手を打てるようなら、そうそう負けはしないんだよな。親蛙アッパレの巻!
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