2019年1月27日(土)
加藤先生の問題提起、次のポイントは心理臨床や教育一般につながる話である。どこで聞いたか、こんな話もあったっけ。
悟りを求めて精進する求道者に向かって、禅僧が云った。
「それでよい、そのままでよい」
相手が喜んで「では、このままで良いのですね」と聞き返すと、禅僧はまた云った。
「いや、ダメだ、そのままではダメだ」
まるで禅問答、というか実際に禅問答なのだろう。向上を求め自らを変えようと煩悶苦闘する dynamic なあり方は既に貴し、けれども現状に甘んじて自己肯定に居直った瞬間、すべてが反転して否となる。本当はもっと深いんだろう、この程度の浅知恵しか出ないが、そこは御勘弁。
話を戻せば、「こんな私でも神は愛してくださる」というのが耶蘇教の確信であるとして、下の句が「そうと知ったからには、こうしてはいられない」のか、「それならこのままこうしていよう」なのかで、できあがりは180°違うことになる。
加藤先生のもち出されたのが、『アナと雪の女王』であるのが面白い。抜粋引用、一部字句改変。
...「ありのまま」は流行語になり、小さな子どもまでが気もちよさそうに「ありのままで!」と高吟している。ただ、この語はもともと"Let it go!"なのだ。悩み相談の場などで「今あなたが固く握りしめ、しがみついているものを手放しなさい」という意味で放たれる言葉であり、単なる現状肯定とは似ても似つかぬものである。
雪の女王エルザは自分の感情をコントロールできず、葛藤に苦しんでもがき、氷の城に閉じこもる。もし「ありのまま」を単純に肯定してよいのなら、閉じこもったりせず、すべてを凍らせながら好き勝手に生きればよいのである。
しかしエルザの方向は正反対だ。”Let it go!”は、自分を変えたいのにそれができない苦しみの叫び、前に踏み出し自分を成長させようとする者の叫びである。それが日本では「ありのまま」に変わり、原作のメッセージから遠く離れてしまっている。何とも残念である...
***
いや、これは気がつかなかった。まことにごもっとも。そう伺ってみると、"Let it go" はなかなかのコンセプトで、強迫傾向の強い自分などにはうってつけと思われる。断捨離しながら "Let it go !" ってね。
あわせて "Let it be" を思い出した。発表されたのは中2の年、そして高2の秋だったか、自分の鼻歌を自分で聞きとがめ、昂揚とも朦朧ともつかない気分で家路をたどった。
これだ、"Let it be"、それでいい、それがいいのだ、まさしく words of wisdom だと興奮して当時の親友に電話したものの、これは全く不発だった。
45~6年も経ち、今あらためて拾ってみたい気もちになっている。"Let it go" と重なりもし、離れもする好一対のように感じられる。
Ω
※ https://news.yahoo.co.jp/byline/sendayuki/20170306-00068399/ 日本版『アナと雪の女王』現象とは何だったのか ― 英語版とまったく違う物語の秘密
千田有紀 | 武蔵大学社会学部教授(社会学)2017/3/6(月) 6:38
いち早く指摘した人が、当然ながらあったのでした。