プリミティヴクール

シーカヤック海洋冒険家で、アイランドストリーム代表である、平田 毅(ひらた つよし)のブログ。海、自然、旅の話満載。

ボートクルージング

2007-03-19 22:39:06 | 東南アジアカヤックトリップ

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(3月12日付「帰ってきました」という記事から始まる旅記録の続きです)

フローレス島からさらに東のレンバル島、アロル島、ティモール島へとフォールディング(折りたたみカヤック)をかついだ旅を続けて行きたいところでしたが、ここらでちょっと時間的な余裕がなくなってきたのと、今一度ロンボク島に戻って島南西部の「スコトン・バラ」という多島海を思う存分パドリング・リサーチしたいという考えがあったので、再び戻ることにしました。バスか飛行機がどっちにしようか迷っているところ、ちょうどロンボク島に戻るクルージングツアーのボートが出発するところだったので、大急ぎで荷物をまとめて乗り込みました。プラマ社という旅行会社が主催する、ロンボク島~フローレス島を往復するツアーで、前にぼくが予約してキャンセルになったやつとはまた別会社のものです。ぼくが乗り込んだとき、往路のみで船を去るお客さんたちのお別れパーティをしている最中で、なんだかとても楽しそうでした。立ち去る人たちと入れ替わるように、ぼくが復路の仲間としてメンバーに加わったというわけです。実際、ここのクルーもお客さんもすごくフレンドリーで感じがよく、昼はところどころの無人島に立ち寄ってシュノーケリングや釣りに興じ、夜はずっとギターを弾いて歌を歌いまくって面白おかしく過ごしました。日本のへんてこな歌を何曲か教え、みんなで酔っ払ったように輪唱したりしました。

 インドネシアの旅行会社やツアーはえてしてとんでもなくええ加減なのに当たってしまいがちですが、このプラマ社だけはすごくきちんとしていて、またホスピタリティ溢れるスタッフが揃っているので、イチオシにお勧めです。

 しかし復路でもまたリンチャ島の同じコースをトレッキングしてコモドオオトカゲを見に行くことになるとは思いませんでした。ガイドも前と同じニイチャンで、ぼくはよっぽどコモドドラゴンが好きなんだなと思われたようです。まあ、ああいうのは二度、三度見るものでもないですね、研究するのでもない限り。

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↑非常に楽しい連中だった。

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↑またもやドラゴンに再会。

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↑背後から見たドラゴン。

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↑この日も強烈に暑かった。荒涼とした大地をひたすら歩き、大粒の汗が毛穴という毛穴から噴き出した。

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↑コモドオオトカゲの巣。夜、巣の中に入って眠り、朝になると抜け出して獲物を探しに行く。

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↑このようなシカも格好のコモドオオトカゲの獲物だ。

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↑いかつい水牛もコモドオオトカゲにはかなわない。コモド、リンチャ島には色んな野生動物がいる。コブラもいるらしい。

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↑クルージングボートからずーっと見えていた、スンバワ島北部にある、sungians島。ここはちょっと気になった。2000m級の立派な山がそびえる無人島。

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↑トレッキングにも向いてそうだが、全く誰も住んでいず、登山ルートなどあるわけもなく、間違いなく遭難するだろうという。またマラリア蚊やコブラがうじゃうじゃいて、住めたものではないとクルーは言っていたが、明らかに山のふもとで煙が立ち上がっていて人の気配がした。もし犯罪を犯してどこか絶対につかまらない場所に逃げるしかない状況になれば、ここに逃げ延びるとよいかもしれない。

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↑スンバワ島北部のフローレス海をひたすら西に向かったが、ここの海はイルカが非常に多かった。時折、数百頭がピョンピョン飛び跳ねるシーンにも出くわした。

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↑このような、普通ではまず行くことができない無人島に停泊して、思う存分シュノーケリングを楽しんだ。

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↑楽しかったクルージングももうちょっとで終わり。


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太古の海

2007-03-19 17:08:03 | 東南アジアカヤックトリップ

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(3月12日付「帰ってきました」という記事から始まる旅記録の続きです)

 コモドオオトカゲを観察して再びフローレス島・ラブハンバジョーに帰ってきて、今度はそこを基点としてカヤックを漕ぎました。周辺は島がとても多く、もちろんカヤッキングに向いています。この、コモド島、リンチャ島を含めたスンバワ島~フローレス島間の多島海域は、速く複雑な潮流により外界から隔たれた独自の生態系が展開されていて、一年くらいじっくり探査してみる価値のあるフィールドだと感じました。

 またこの海域は海洋生物保護区にも指定され、手付かずの珊瑚礁が展開されるダイバーの聖地でもあり、海外からインドネシアに移住してきてこの海にノックアウトされた外国人ダイバーもかなり多いらしく、「コモド周辺の海域ほど生態系のクレイジーな場所はない、一生かかって探索する価値のあるフィールドだ」と熱中している人もいるらしいです。

 この海域をカヤックで漕いで、「ああおれもこんなところにまで来たんだなあ」という感慨がありました。ラブハンバジョーの近辺は生活用水垂れ流しにより海水がかなり汚いのですが、ガンガン漕ぎ進み島々が現れては去ってゆくにつれて海も美しくなり、そして多くの無人島群も人間臭がなくなり、むしろ人間の歴史などはるかに超えた、まるでコモドドラゴンが象徴するような太古の相貌を帯び始めるようにすら見えてきました。そういう中でやがてカヤックの胴を打つ寄せ来る潮波はまるで水の惑星「プラネット・アース」の鼓動のように感じられ始め、ぼくは緩やかに流れるブルーの水の上に浮かぶ浮遊感を意識的にじっくり味わいつつ目を瞑り、海によってひとつにつながる地球のさまざまな自然についてイマジネートしました。

 ナイアガラの滝について想い、 セントローレンス氷河について想い、 シベリアのタイガとツンドラの大地を想い、 アフリカのサバンナに吹き渡る風とカバとチーターとヒョウとアフリカゾウとヌーの大群を想い、 アラスカのオーロラとか南氷洋のオキアミをガアアアーってでかい口を開けて食うザトウクジラとか千島海峡を漂う8mのヤナギクラゲとか渡り鳥とかベニザケとかオットセイとかトドとかニホンオオカミとかステゴザウルスとかこの惑星のさまざまなありとあらゆる自然や生きとし生きけるものについて色々、イマジネートしました。

 やはりカヤックは素晴らしい。地球の息吹・鼓動をリアルに体感し、イマジネーションを喚起し、心の中の世界を広げてゆくための最強のトリップツールだと思いました。

 その後そのまま漕いでコモド島、リンチャ島に行くことも可能でしたが、そこまでの時間はありませんでした。「またいつかきっと」、と思う。

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↑フローレス島の漁村、ラブハンバジョーの漁村の風景。インドネシア語で「ラブハン」は「港」の意味、「バジャウ」は「海洋民族」の意味だがそれを繋げて「ラブハンバジョー」と呼ばれるようになったらしい。海洋民族だから環境意識とかすごく高いのかなと思うけれど案外そうではなく、生活用水垂れ流しでかつそこらのゴミをポイポイ海に捨てまくるので、インドネシア全体にいえることだが人の集落周辺の海は汚い。逆に人がいない場所はすごく美しい。

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↑沖へとパドルを進めれば進めるほど、ここらの自然は太古の風貌を帯び始める。

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↑ここらの海域は漕ぐ価値のある場所がたくさんありすぎて困ってしまう。またいつか絶対来よう、そのときはもっと時間をかけてじっくり探索したいなと思うけれど、実際は旅において「二度目」というものはほとんどないものだ。自然は一期一会である。「またいつかきっと」と思いつつ、おさらばしていく。「おさらばだけが人生だ」というのがカヤックトリップの本質なのかもしれない。

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↑このあたりの海域はどこでも、潜ると手付かずの美しい珊瑚礁が目白押しで、カヤックであちこち巡りながらシュノーケリングするのがとても楽しかった。

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↑こういうビーチもあちこち無数にあるが、だいたい潜ると見事な珊瑚礁が展開されている。

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↑潮の流れの速い、島の岬の先端。潮流によって外界から隔絶された独自の生態系がキープされている。ここにしか住まない生物にとって、潮汐流が神なわけだ。またその潮汐流を司る、月や太陽の引力や地球の自転も神なわけだ。

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↑荒涼とした赤茶けた断崖絶壁には、いっそうの太古感が感じられる。

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↑再びラブハンバジョー港に戻ってくると、強烈なスコールに見舞われた。向こうからやってくる雨粒がはっきりと見える。ぼくはカヤックの上で体感するスコールがとても好きだ。熱帯のスコールは非常にはっきりしていて、気持ちがよい。ここまでのやつはあっぱれな感じがする。


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コモドドラゴン

2007-03-19 14:07:31 | 東南アジアカヤックトリップ

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(3月12日付「帰ってきました」という記事から始まる旅記録の続きです)

その後、スンバワ島サペからフェリーで7時間かけてフローレス島ラブハンバジョーという港町まで渡り、そしてそこから別のボートをチャーターしてリンチャ島まで渡って島内をトレッキングし、コモドオオトカゲを観察しました。

 ちょうどスンバワ島とフローレス島の間の海域はいわゆる多島海で、大小数百個はあろうかというほどの島々が点在しています。島と島の間には速く複雑な潮流が交錯していて、その影響で島々には外界からの影響を受けずに特有の進化をとげてきた生態系が今でも残っています。中でもかなり大きな面積を持つコモド島、リンチャ島には、そのルーツが白亜紀までさかのぼる、世界のトカゲ類の中でも最も巨大な古代生物「コモドオオトカゲ」が野生の状態で約2000頭生息し、保護されています。そいつは「コモドドラゴン」とも言われ、成長したオスは体長3m、体重は100キロを超えるいかつい巨漢となります。シカ、水牛、野ブタなど島にいる動物を狩って食べていますが、時折人も襲うことがあります。

 昔、シーカヤック絡みで自然観を深めるための本を片っ端から読んでいるうちに、ライアルワトソンの「アースワークス」という本に出くわし、そこに出てきた人食いコモドドラゴンの話が非常に印象的で、ずっと心に残っていました。いつか必ず会いにいかなければならないと思っていましたが、ひとまず念願がかないました。ちなみにライアルワトソンのいくつかの著書は、シーカヤッカー必見です(特に「風の博物誌」)。

 こんなやつらが未だに生息しているってことはそれだけまだまだ世界は広いってことで、その「まだまだ世界が広い」ってことを実際に肌で感じ入り自分の中の世界を広げるためにもやはり色んな場所を旅しなきゃなって思います。余談ですがぼくは自分のちっぽけな周囲のことや世間の常識的価値観しか知らないいわゆる「世界が狭い」人が生理的に苦手で、また他人がどうというより自分が「世界が狭い」状態になってくるとだんだん具合が悪くなってきます。そんなわけでこのコモドドラゴンのような存在は大切です。

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↑ノッシノッシと歩く時の腕の動かし方に、非常に恐竜を彷彿とさせるものがある。この鋭い爪や口の中の牙には雑菌がもうとんでもなくワイルドに繁殖しまくっており、噛まれたり引っかかれたりするとそのウイルスによって敗血症にかかって絶命してしまうという。

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↑よく見ると、目とか結構かわいい。

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↑こいつもかわいい顔している。爬虫類愛好家にはたまらないだろう。

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↑リンチャ島の風景。はるか向こうの雲の下に見えるのはコモド島。ペンペン草しか生えないような荒涼とした大地に、ヤシの木が点在する。物凄く暑く、摂氏40度くらいあったのではないだろうか。すべての生物から水分を奪い去ろうとするかのような太陽光線の灼熱。バーーっと晴れたかと思えばサーっと雲が覆い、あるいは向こうから雷雲がやってきてスコールがバババババーと降って去っていく。その繰り返し。あっけらかんとしていて、四季のある自然場所のような細やかな情感はない。焼け爛れたような大地、そんなところにコモドオオトカゲはいる。

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↑このいかつい顔が恐竜的だ。獰猛な、人食い顔をしている。1973年に食われたスイス人ツーリストのルドルフ氏は発見された時にはメガネと時計だけだったというが、まさに食後メガネと時計だけペっと吐き出したあと、こんな顔してけだるそうに昼寝する姿が目に浮かぶようだ。。

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↑一見全くやる気なしのようにも見えるが、実はこうやって周りの土とか木に同化し、自らの気配を消しながら虎視眈々と獲物を待ち、獲物が近づくともう目にも止まらぬ速さで腹部に飛び掛り、ハラワタを食い破ってしまう。嗅覚が発達しているが、目や耳はあまりよくないらしく、また脳も多分あまりよくないらしく、数メートルの距離から野球ボール大の石を全力投球でぶつけても、「ん? 蚊か?」くらいの反応しか見せない。逆にいったん襲い掛かると決めたならばしつこくしつこくストーカーのように相手を追い詰めるということらしい。しかしこの表情、実にいい。

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↑コモドオオトカゲの餌食になった水牛の骨。

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↑これも餌食になった水牛の骨。いい感じの冒険的な雰囲気をかもし出している。

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↑ガイドに案内されてこんな感じでトレッキングする。ヨーロッパ系のツーリストが多い。時期的なものかどうかはしらないが、バリより東に行って以降、一人の日本人にも出会わなかった。日本人のバックパッカーって一時、どこにでもいたけれど最近は減っているのだろうか?


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