プリミティヴクール

シーカヤック海洋冒険家で、アイランドストリーム代表である、平田 毅(ひらた つよし)のブログ。海、自然、旅の話満載。

クラビ-4 島々

2007-03-27 14:56:19 | 東南アジアカヤックトリップ

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(3月12日付「帰ってきました」という記事から始まる旅記録の続きです)

 先述しましたようにマングローブ、奇岩・巨岩群ときて、次は「島々」です。その3要素が、クラビーにおけるシーカヤックの醍醐味ということになります。クラビ~プーケットにかけての広い湾には、数百はあろうかというおびただしい数の有人・無人島が点在していて、本当にじっくり巡ろうとするならば1ヶ月はあっという間にたってしまうでしょう。

 実はこの旅の前に色々思案しました。「津波後のこの地域にノコノコと能天気にカヤックなど漕ぎに行っちゃっていいんだろか? 心から楽しめるのだろうか? 自然の猛威の記憶が生々しい場所に自然を愛でに行くってそれ、なんか不謹慎じゃないかなあ?」と。しかし考えた結果、別にいいんだという結論に至りました。第一、そうやってツーリストが躊躇して来なくなると、現金収入を観光に頼る現地人の生活はより苦しくなってきます。もう2年もたつのだからそこまで気にすることはない。あまり悲劇に囚われすぎて今ここの喜び楽しみを曇らせる必要もない。そのように、実際行ってみて思いました。

 さて、クラビー川河口から出艇してそのまま海に出て、もちろん島々にも渡りました。沿岸付近の海水は川からの泥水や生活用水などが入っていて結構濁っていたのですが、沖合いに向かうにつれてだんだんだんだんと水も澄んできて、10キロも離れた無人島にたどり着くと、もうそこは典型的な「南の島」という感じの、ライトブルーの海水と珊瑚礁、そしてヤシの木が潮風に涼しげにそよぐという、絵葉書のような風景が展開されていました。

 毎日毎日南西の風が吹き、午後になると割合強くなって夕方弱まるというパターンが繰り返されました。地元の人は毎日のように「今日は物凄く風が強い」とか言っていたので、10数キロの島渡りには神経を使いましたが、せいぜい7,8m/sくらいで、そう心配するほど物凄いってことはありませんでした。また波もそれほど立たず、カヤックを漕ぐ分には別段支障ない状況でした。むしろ適度な風波によって、「波そのものの動きがダイレクトに乗り手の身体に伝わる」、というスキン地(フォールディング)カヤックの特性を実感することができました。

 ぼくは日本にいるときはいつもポリエチレン、FRPなどの素材のいわゆるリジット(固い)製カヤックに乗っています。リジットの場合、ニュアンス的に海水を「跳ね返す」「流す」「切る」というフィーリングで進んでいく感があります。一方フォールディング系のスキン地カヤックは、船体布がリジットに比べてソフトであり、また骨組みのポール全体が共振して「しなう」ので、波うねりや潮の流れなど海の運動がよりリアルに身体に伝わってくるという実感がすごくあります。なんとういうか、ビリビリっときます。それがなんとも、いいんですよね。というわけで、最初、フォールディングはリジットより劣るいわば代替品のようなものとして見ていたところがありましたが、実際に漕いでみるとこれはまたひとつの深い世界観がある乗り物なんだなと思うようになりました。考えてみるとそういう船ってのは他にないし、サーフィンでもウィンドでも皆、リジット素材を使っていて、波のダイナミズムを振動としてビリビリ感じるという味わいは、ない。余談になるけれど、先日紀伊長島の方でシーカヤックアカデミーというシンポジウムがありまして、その時にお会いしたフェザークラフト代理店のO氏も「ダイレクトに波のエネルギーが身体に伝わってくるのがスキンカヤックの醍醐味です」とおっしゃっていて、ああなるほどさすが年季の入った人はよく分かってるなあ、と思いましたが、そういうことなのです。水の惑星「TERRA」の鼓動を全身でfeelすることがシーカヤックという乗り物のひとつの大きな醍醐味だとするならば、フォールディングカヤックはもっと評価されて乗り手が増えていってもいいのではないかと思います。これは感性の高い人の乗り物だと思います。

 しかし、贅沢ですが、もっと時間がほしかったですねえ。一ヶ月ほど、カヤックにテントを積んで島々をあちこち渡り歩いて、しらみつぶしにあちこち探索したいものでした。それくらいしても飽きない、よいフィールドだということです。

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タイのメシ

2007-03-27 12:03:43 | 東南アジアカヤックトリップ

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(3月12日付「帰ってきました」という記事から始まる旅記録の続きです)

 タイはメシがうまいです。そこらじゅうに屋台があって牛、ブタ、シーフード、チキン、野菜などなど、さまざまなに料理された食材が店先に並んでいて、店のオバちゃんに「これとこれとこれちょうだい」と伝えて白飯にぶっかけてもらえば一丁上がりです。ぶっかけメシだけでも無数のバリエーションがあるし、屋台ごとに味が違う。ほか麺類、スープ、煮物、炒め物なんでもあるし、第一活気があって楽しい。屋台のメシを食いに行くだけのタイ旅行というのも立派なひとつの旅といえると思います。

 朝市などにいっても実に色んな素材がズラーっと並びに並んでいて、ずーっと見ていて飽きません。下の写真はカエルや鶏の生々しいやつですが、「うわ~キモイ」とかフヤケタことを言うなかれ。最近日本でも地産地消などと言って見直されることが多い「食材」というやつですが、日本のファーストフード化した、いつどこで生産されたのかよく分からない切り身とか冷凍食品とかをオチョボ口して食ってるほうがよほど不潔で気持ち悪い変態行為なのであって、それに比べてこっちの方は実に「メシを食う」って輪郭がはっきりしていて、非常によいです。料理好きの人とかがタイの朝市に行ってずらっと並んだ素材を見ると、もう胸がキューンとしてきていてもたってもいられなくなっちゃうんじゃないでしょうか。

 日本って道路交通法や衛生上、屋台がほとんど存在しないけれど、ほんとはニートとか主婦でパートに行くのも時給安すぎてアホらしいと思ってるような人がバンバンやりゃあ面白いのになと思います。実力主義の世界で、美味しければ人はたくさんきて、儲かります。人気の屋台は人がたくさん押し寄せ、例えばおっさん一人で客のオーダー順に料理していったりするので、出てくるのが非常に遅いことも多いです。40分とか普通に待たされたりします。しかし、それでいいんです。本来メシはゆっくりと楽しみながらいただくものであって、ガーと早食いするってのはエレガントさに欠ける、非常に貧しい行為なのではないでしょうか。

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クラビー3 モーケン人

2007-03-27 05:01:58 | 東南アジアカヤックトリップ

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(3月12日付「帰ってきました」という記事から始まる旅記録の続きです)

 クラビ川河口のマングローブジャングルを掻き分けパドルを進ませると、しばしモスリム系漁民、モーケン人の集落が出てきます。モーケン人は古来、カバンと呼ばれる家船で生活し、インドネシア、マレーシア、タイ、ミャンマー沿岸を季節によって旅する漂泊の民族でしたが、タイでのモーケン人は大部分が定住しているようです。

 ミャンマーのメルギー諸島やインド領のアンダマン諸島、ニコバル諸島という多島海にいるモーケン人は、いまだに漂泊生活していると言われています。海との共生生活をしているだけあって、一説によれば2004年暮れのスマトラ沖地震の際にも、潮の流れの変化や波うねりのかすかな異変にいち早く気づき、みんな高台に素早く避難したので、大津波がやってきたにもかかわらずほとんど人的被害がなかった、とも言われています。特にミャンマーは軍事政権でなかなか情報が入ってこないため、「謎が謎を生む」という感じですが、海の観察眼の鋭さによってかなりの部分被害が軽減されたというのはどうやら本当のようです。少し前の「ナショナル・ジオグラフィック」誌にも取り上げられていました。http://nng.nikkeibp.co.jp/nng/feature/0507/index4.shtml 参照。

 で、クラビー川河口付近の定住モーケンの集落に近づきますと、まずどこかに設置された町内スピーカーのようなものからコーランの独唱が聞こえてきます。マングローブやヤシの木が熱帯のギラつく太陽光線に照らされる中コーランが流れるという図柄は、なんともシュールに思えたりしましたが、よくよく考えると世界でイスラム教徒が一番多いのは東南アジアです。インドネシアもそうですが、東南アジアのイスラム教徒はイスラム以前の精霊崇拝も残しつつ、なんとなくうまい具合に混交していることが多いようです。余談ですがぼくなりに色んなものを見てきて、混交性こそがアジアのアイデンティティではないだろうかと思うようになりました。混交性とは要は多様性を重んじる、他者を尊重する、異文化をも受け入れるという発想のことで、それはさらにアレンジしだいでもっともっと21世紀的な素敵な叡智になっていくんだろうと思います。

 水際に立てられた高床式の家からおっさんらがこちらに手を振り「ハロー」と声をかけてきます。そんな感じで海からは結構人懐っこい人たちでしたが、逆に上陸してあたりを歩くと結構「なんだこいつは?」みたいな感じで、妙な視線を浴びせかけられました。ヨソモノはめったに来ない場所なのでまあそんなもんでしょう。水牛、ヤギ、ニワトリ、アヒルなどがそこらを歩き回り、子供らが粗末なゴムまりのようなボールでサッカーをし、だだっ広い草原のような広場ではおっさんらがタコ揚げしていました。みんな真剣な顔しておかしいんだけれど、どうも東南アジアでは凧揚げは大人の遊びのようです。

 別に「海洋民~!」「海洋漂泊民の末裔~!!」って感じではなかったです。まあ人は民族とかそういうものよりも生活環境のほうが影響が大きいんでしょうね。それからどうも東南アジア全般に目に付くことですが、みんなゴミをそこらにポイポイ、海にポイポイ、すべては水辺に垂れ流しというシーンをまのあたりにしてきました。これだけはいったい何考えてんだろうかと思いました。

 なお、ネットでちょっと調べていると、なんとミャンマーのメルギー諸島に行くシーカヤックツアーがプーケットから出ているのを発見してしまいました。http://www.seal-asia.com/seakayaking/index.htm すげえなと思いました。誰かぜひ行ってみてきてください。

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クラビー2 ロック

2007-03-27 03:34:00 | 東南アジアカヤックトリップ

 (3月12日付「帰ってきました」という記事から始まる旅記録の続きです)

 クラビーは石灰質の奇岩、巨岩、断崖絶壁が見事な地帯として有名ですが、中でもライレイ~アオナン海岸にかけて数キロの区間は、シーカヤック的にも特筆に価するエリアです。そこらを流している観光船は、「この地球上で最も素晴らしいダイナミックな景観を誇るエリアです・・・」うんぬんかんぬんとアナウンスしていたりして「ほーう、大きく出たな!」と笑ってしまいますが、しかしいずれにせよ確かに見事なことは見事です。このあたりにはシットオントップカヤックがレンタルされており、結構楽しんでいる人たちも見かけました。できれば1日かけてじっくり漕ぐと、非常に面白いエリアです。

 ここらは特に、写真のようにツララ状のまるで刺ささってくるかような鍾乳洞系の岩がひときわの太古感を演出していて、カヤックから見るとまさにリアルそのもので、味わい深かったです。たとえば、ほんとはカヤックの尻の下に泳いでいるのはアジとかタイとかサヨリとか系の普通の魚ですが、なんとなくそういう奴らではなく、アンモナイトとかシーラカンスとか三葉虫とかそういう、超大昔の連中が闊歩しているような錯覚にとらわれる瞬間がありました。ひたすらボーっと漕いでるとよくそんなイメージがふと浮かび、心の中で絵画的に色彩が踊りまくったりするのですが、そういうのも楽しいです。

 乾季(11月~3月くらい)はよほどのことがない限りでかい波は来ないので初心者向けのフィールドですが、ただ地形的に風が巻いてきたり、瞬間的な突風が起こったりするので、それだけは気をつけたほうがいいと思いました。

 以下の写真、よろしければクリックして拡大して見てやってください。

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