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※タンザニア・ザンジバル島カヤックトリップの続き記事。当カテゴリの下から順に読んでいくと話の流れが分かりやすいです。
そのストーンタウンのオールド・フォートのアトリエで描いているティンガティンガの画家のニイちゃんとはその後も滞在中あちこちでばったり出会ったりすることになるわけですが、とにかくアトリエの中で一時間以上色んな話をしましたね。どんなアトリエかと言いますと、一番上の写真がありますでしょう? その写真の中の一番奥にボコッと砦が飛び出しているでしょ。その中です。風が通らない、体感気温42℃といった感じの石造りの室内にて。
まあ知らない異国人同士が色んな話をするとなると、必然的にお互いの国の話が一番多くなるわけですが、昨今の日本の話となると、どうしても震災や原発事故に触れることになります。
タンザニアはほとんど地震のない国で、まず津波というものがどういうものが全くイメージがつかないようでした。まあ、ハンパなくでかい波のことだろうということで、タンザニアでも嵐が来た時に海が荒れまくって海岸線の道路にバババーンと覆い被さってくることがあったりするけれど、どうやら彼はそれのでかいやつが津波だと思っているようでした。
実際は津波って波ではなく、水の壁が突進してくる現象ですが、確かに地震のない国ではイメージつかないでしょうね。
一方、原発事故による放射能の脅威のことは結構、よく本質を分かっているなと思いました。普通の危険物質と違って何万年も毒性が消えない、しかも見えないところから危険が進行してゆき気づいた時には手遅れとなってしまうもので、他の凡百の危険物質とはヤバさの格が違う。そんなものを人間は扱うべきではない、と、まっとうな意見が返ってきました。
多分これは逆に、変な情報がないからだと思います、普通の人間のごく普通の神経で考えたらなんびとたりともこういう答えになるという証だと感じました。原発や放射能の場合、様々な情報を日常茶飯事に聞いていると、妙に慣れっこになって危機感覚が麻痺してしまうところがどうしてもあります。本質を見失ってしまっている人も多いですよね。
全く関係のない人の方が、しがらみなく、色眼鏡をかけず、素直にものを見ることができるという、ひとつの分かりやすい例のように思いました。
そしてぼくはなにげに「原発や放射能によって復興も遅れ、どえらい損害となっている。ま、悪魔みたいなもんだな」とつぶやきました、すると彼は面白い答えを返してきました。
「悪魔? そんなものはいないよ」と。
ここで文化の違いが出てきたのです。
東アフリカのスワヒリ語圏はイスラム教徒が趨勢を占める地域となっていまして、オマーンの統治が長かったザンジバルは特にイスラム教色の強い土地柄です。そして彼もムスリムでした。で、彼が言うには、イスラム教的には全ての創造物は創造主であるアラーが作った物であり、であるからして原発も放射能も創造主の下にある万物のひとつであるので、デヴィルとかそういうものではない。ということでした。
デヴィルなんてものはこの世にはいない。
だけど人の心の中のイーヴル(邪悪さ)というものは存在する。
人間の心のイーヴルさが結果的に原発事故や放射能を生み出したわけだけど、
事故を起こした原発や放射能そのものは物質なわけで、
ということは全ての物質を生み出した創造主アラーの下でのイチ物質となるわけで、
デヴィルとかそういうものではない。
このデヴィルとイーヴルの使い方が絶妙で実に興味深いなと思ったのでした。
ちょいと難しい話になっているかもしれませんが意味、分かります?
色んな国や文化の人の、色んな見方があって面白いなと思いました。