プリミティヴクール

シーカヤック海洋冒険家で、アイランドストリーム代表である、平田 毅(ひらた つよし)のブログ。海、自然、旅の話満載。

平戸島~五島列島の海旅 5日目

2016-11-02 22:56:06 | 平戸島~五島列島への海旅

前回「4日目」記事からの続き

 平戸島〜五島列島の海旅。 5日目

 前日は野崎島から小値賀島へ渡って一泊したが、この日はズルしてフェリーで六島に渡った。
 人口3人の島だけど、可能性一杯の島だ。

 島出身で長年JICA職員として世界中を歴任したのちUターンで帰って来られた小金丸さんや、地域興こし協力隊の宮本さんらが、荒れはてた島を開墾し、自然滞在観光やエコビレッジ的な島として再生させようと頑張っている。また若い人達が移住して来ても無理なくやっていけるようなインフラ作りを目指して地道に活動してる。

 かつては300人以上が住み、農漁業が盛んで、江戸時代には捕鯨の基地になっていたこともある。また島周辺の潮がとても速く、今のように動力船のない手こぎ櫓櫂舟の時代、潮止まりの時間をきちんと読まないと無事に島に戻ってこれなかったことから、「時間厳守の島」という異名を持つ。動力船の時代の今はそこまで神経質になることなく、むしろ島時間でおおらかに過ごすことができるだろう。

 周囲が3キロほどとちょうどよいサイズで、ぐるっと一巡りするのも時間がかからず、コンパクトにまとまっている。学校の跡地や空き屋群、高麗芝の広い草原などもあり、有効活用もできそうだ。
 一日案内してもらって、サイズ的にも景観的にも可能性豊かな島だとおもった。

 これからインフラを整え、農漁業に滞在型観光、 それらで食べていけるとなると、十分豊かな生活が送れるだろう。都会で忙しく働き自分を見失って鬱になったりするくらいならばこういう島でのんびりゆったり暮らす方が遙かに人間らしい生き方だと思えるが、いかがだろう? 

 夜は小金丸さんの船でイサキ釣りに連れてっていただいた。
 釣ったでかいイサキの刺身を宮本さんの家で食べ、そのまま宿泊させていただいた。
 またここで、小値賀町の観光への取り組みや、町の組織である「アイランドツーリズム」 の問題点、改善すべき点などをたっぷり教えて頂いた。

 小金丸さん、宮本さん、ありがとうございました。応援しています。また友達つれていきます。
 みなさん、五島列島の六島にぜひ注目を。

次記事「6日目」へと続く


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平戸島~五島列島の海旅 4日目

2016-11-02 17:23:06 | 平戸島~五島列島への海旅

前回「3日目」記事から続く 

平戸島~五島列島の海旅 4日目 野崎島から小値賀島へ

 今日も早朝からテントを揺らす嫌な風が吹いていたが、今日こそは出艇したかった。
 昨日停滞して一息つくことによって、この海域の傾向や今後の旅のスタイルなどがおぼろげに見えてきた感がある。旅の前にはいつも、ある程度のテーマやコースは決めておくが、旅が始まってしまうと結構行き当たりばったりになる。そう言ってしまうとテキトーな漂白の旅のように聞こえるだろうが、海の状況、風や天候の状況、その土地の空気感などなど、実際に行ってみて臨機応変に対応していかなければ危ないし、またたとえ予定通りに行けたとしても予定をなぞるだけなんてあまり面白くないからだ。パドルを海に差し込んでダウジングし、海水をなめてみた味の具合で行き先を決める。それが旅の安全と充実度に繋がるとでも言おうか。
 それがカヤックトリップというもの。
 とにかくここのところ毎日のように北東の風が吹いている。それも10m/sクラスの結構強いやつ。 そしてこの海は北東に大きく開けているので、長い距離の海面を渡ってきた風が大きな波うねりを生じさせる。
 プラスアルファ、対馬海流と、島の間を流れる潮流がある。
 潮と波ウネリがぶつかるとかなりでかい、しかも不規則にカヤックを揺らす潮波が立ち上がる。こいつが一番やっかいなのだ。ウネリだけならばまだいい。潮流だけならまだいい。
 その両者がぶつかり、複雑に干渉し合うとやばいのだ。
 それがここの海。
 今年は異常気象気味で、いつもならここまで北東は吹かないと色んな人が言うが、旅人にとって例年のことはあまり関係ない。とにかく今ここで北東の風が連日吹いている。なので、出来るだけ早く風裏になる西側海岸に回りたい。

 西側に回るには2つの難関がある。島の南側に津和崎瀬戸、北側に六島瀬戸があり、そのどちらかを通過しなければならない。どちらも海図では4~5ノットの潮流と書いてあるが、こういうところでは実際、ピンポイントで7,8ノット流れている場所があったりするものだ。
 おまけに今日は大潮である。そいつとぶつかる外洋からのうねり。
 また、 野崎島には漁師がいないので、潮止まりの時間を聞くことができなかった。
 とりあえず干満の時間だけは分かっている。
 となると、目星を付けた時間帯にある程度近くまで漕いでいって瀬戸の外で様子を見る。そして潮止まりの兆候が見えてきたところで渡ってしまう。
 それが一番いい方法だろう。
 マジでやばいと思ったら引き返す。

 ということで朝イチまず南下し、津和崎瀬戸を目指した。やはり嫌なウネリが入っている。どんより曇っていて雨がぱらついているのがまた、鬱々とした気分を増長させる。アウェイの知らない海の難所を行くときのなんとも言えないナーバスさ。瀬戸に近づけば近づくほど潮の影響が出始め、波うねりの形状が変わり、まるで海底からくる不思議なエネルギー体のように、カヤックを揺らす力が不規則になる。沖の瀬戸の水路あたりを見ると、かなりでかい白波が崩れている。とりあえず岬の先端の「一ツ瀬」という岩礁の手前まで来て様子をうかがったが、オーバーヘッドの崩れ波が炸裂していてちょっとやそっとで行ける状況ではなかった。
 ここで色々葛藤する。
 もしかしたらそのやばい状況はほんの数十メートルほどで、岬を越えると俄然穏やかになっているかもしれない。いや、なっていないかもしれない。オーバーヘッドの潮波が押し寄せるゾーンが何キロも展開されていて突入したは最後、最後まで漕ぎきらなければ抜け出せないのかもしれない。
 沈したらロールで起き上がるしかないが、フル過重のロールは大変そうだな。
 上陸して高台からスカウティングできれば一番いいけれど、切り立った断崖で、上がれるような浜がない。 
 まだ最大満潮まで時間がある。多分今、かなり潮が走っている時間帯だろう。
 この場所で潮止まりを待っているのも大変なので、一旦引き返して出直すことにした。
 
 港に戻って、しばらく休憩。
 再度出艇し、今度は北の六島瀬戸から行ってみることにした。
 若干潮波が落ちついてきたように思えたからである。またバウ(舳先)を北に向けたときの方が腰の入ったパドリングができる感じだったからである。実はこの「漕ぎ味」というのも潮や波がかなり影響するもので、カヤックが自分に教えてくれる貴重な海の情報なのだ。腰の入った力感ある漕ぎができる時の方がそうでない時よりもカヤックとの一体感も生まれ、テクニックも繰り出しやすい。何より不安感や鬱々とした感情から解放される。
 ということで、体感を信じて、南回りの津和崎瀬戸をやめて北回りの六島瀬戸を回ることにした。

 だけど、 六島瀬戸周りの方が陸からの視覚的情報が少なく、未知的な部分が大きかった。またものの本によると、六島周辺も潮が速くて有名で、明治39年に村の舟が近辺で転覆し、何人も死者がでた事故があったらしい。そしてその後この島は「時間厳守の島」と言われるようになったという。つまり「潮止まりの時間帯でなければ危なくて島に近づけない、きちんと潮止まりの時間を守って動け」、という戒めにまでなったというわけで、いっそうここの瀬戸のヤバさに彩りを添える話になっている。
 「ヤバさを感じたらヤバいゾーンのまっただ中に突入する前に引き返す」という前提で進んでいった。
 うねりと潮波がぶつかっている場所は確かに2,3あったけれど、こちらの方が視界が効いてコース取りもしやすく、けっこうあっけなく瀬戸を通過できた。時間的にも潮止まりに近かったと思うが、それでも川のように流れていたのは確かだった。

 安全地帯に抜け出たときのホっとした瞬間。 
 身体の全細胞が喜びに溢れるかのようにざわめき、超でかい声でシャウトしまくった。
 まあ、こういう感覚の中毒になってしまったらまずいのだけれど、だけどすごく生きている実感や感謝の念がわき起こる、いい瞬間だと言えるだろう。そして周囲の海、山、島、空、雲、鳥、木々、すべてのものがいとおしい気分になってくる。
 「自然との一体感」とは、こういうことをいうんだなという実感。
 漕ぎ抜けてみる、野崎島がとてもいとおしい存在に思えてきた。
 野生の鹿と隠れキリシタンの島、いつかまた来たい。心底そう思った。

 目の前ででかいブリが小魚を追ってボイルした。
 そのエネルギッシュな生命感、躍動感が胸にしみた。
 
 写真はいずれも安全地帯に出てからのもの。
 その後、心地よくツーリングし、小値賀島の港に近づき、そのそばにある船瀬海水浴場に上陸。そのまま歩いて島のゲストハウスまで行き、一泊した。ゲストハウスの隣りにあるカラオケスナックが唯一、晩飯が食える場所でそこで酒を飲んでいると、色んな人と知り合いになった。
 島にまつわる色んなことを教えてもらった。 

次回「平戸島~五島列島への海旅 5日目」へと続く

  

 


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