この句を初めて読む人は、どういう意味なのか、作者は何を言おうとしているのか、全く分からないかもしれない。
朝日が昇れば蒸発して消えてしまう短い命の「露」。宇宙誕生から百五十億年、地球誕生から四十億年、人類誕生から三十万年。そういう時間からすると、人間の命などないに等しい。人生八十年の時代になったが、八十年など「あっという間」なのだ。そういう「露の世」
作者は、「そんなことは分かっているよ、よく分かっているけれども、さりながら・・・・・納得できない」と言っている。何故か。
実は、作者は、小林一茶、息子を亡くした時の句なのだ。この句を
吾子死せり露の世ながらさりながら
とすれば、読者は理解できるのに、そうしなかった。この省略が俳句の奥深いところであり、人間一茶の非凡を示している、とも言えるだろう。