春霞沖行く船のエンジン音 海人
野には野の海には海の春来たり
表札を持たされている雪だるま 歩智
美容室どの鏡にも黄水仙
春の宇治飛び跳ねている好奇心 さくら
菜の花忌行きつ戻りつ時空旅
したたかな軒の氷柱や宿明かり いよ
初雪を眺めてしばし白き闇
もぞもぞと貝よく動く四温かな 貞次
日脚伸ぶ太極拳のゆるやかに
待ち針のパールが光る針供養 薪
凍空の皆既月食酔うており
骨董市より我家に来たる豆雛 稱子
手鏡に映る背丸し二月尽
日溜にむしろをひきて梅ソフト 美部
寒桜目白とカメラが目白押し
薄氷の鉢に被せしやつれ茣蓙 豊春
春きざす鴎群立つ観光船
春寒しスカーフ一枚首に足す 清海
春きざすうっすら桃色山の峰
風呂吹や舌喉胃まであっつ熱 洋子
焼き芋は英字新聞にまかれおり
ゴミ置場小児マスクの数減りぬ 炎火
春の海豪華客船横たわる
手袋を狐に似せて塀に下げ 余白
公園も冬ざれ誰も訪れず
遠来の友を帰さぬ春炬燵 鞠
春寒の海際凛と一羽鷺
河豚鍋の湯気あいづちの聞き上手 佳津
和菓子屋のはやばや春の和菓子かな
打たせ湯も散って秘境の朧月 沙会
夕焼けてサーファー染める磯の春
雪掻きをしてもやっても雪積もる 貴美
やっと春ついに来た春これで春
鶯を空耳で聞く二月かな 雲水
陶雛の見つめる宇宙兜太死す