立春を過ぎて間もない、春風の中でもまだ肌寒い早春の教室。懸命に地球儀を拭いている少年がいた。私には何故か、この六年生に少年の姿が浮かんだ。もうすぐ卒業式、そして、中学生になる初々しい少年の姿である。声変わりも近い、悩み多い思春期の入口にさしかかった少年の胸に、地球儀は何を思い描かせただろうか。これからの未知の世界への期待と不安、どんな夢を抱かせただろうか。
あの東日本大震災から一年、かけがえのない美しい私達の地球に、今もなお各地で天災や争い、貧困が日々伝えられている。春はまだ遠い。地球儀を拭く少年、少女たちに世界に馳せる明るい未来がやってくる。そんな二十一世紀に一歩づつできることから行動しょう…そんな気持ちになった今日の句会でした。(正太記)
足す言葉、引く言葉はありません。正太さんありがとうございました。
春の旅赤旗を読む老夫婦
朧月ガンジーの繰る糸車
啓蟄や汚染残土の仮置場
夜桜やアルミニュウムの投票箱
お通じの心配の無い鯉のぼり
竹の子や核ミサイルも土の中
落石の十センチ横雨蛙
パレットに額紫陽花を搾り出す
藪枯し鉄を手にした弥生人
サイレンの一分間や敗戦日
平面図だけで建てたり蜘蛛の家
夏の波バッキンガムを崩しおり
黒山は解体作業中の蟻
東京都釣瓶落しとなりにけり
秋場所や絆創膏対テーピング
名月や生き残るのは大宇宙
目の子算十匹までの赤とんぼ
初つらら防災小屋の赤いドア
猟銃の一発響く山の奥
湯豆腐や爆破されたらどうするの
冬の朝新聞受けにイスラム国
マネキンの赤い手袋指す虚空
ガラス窓三百号の冬の海
どんど焼き両目を剥いた大達磨
これからもとことん平和初詣
(岩戸句会第五句集「何」より 石川炎火)
ウツギ(空木)