これも、20年位前のこと。
ある小さな広告会社の経営者Sさんに、何のお礼か忘れたが蜜柑を送ったところ、この俳句が書かれた葉書が届いた。
Sさんは、俳句をやっていなかったので、私はとても驚いた。お礼の言葉として、素晴らしい俳句だからだ。但し、本人の作かどうかは、未だに分からない。
「1、爪(が)たてば」という表現が少しおかしい。「2、爪(を)たてれば」が正しいのではないかと思うが、字余りになる。
蜜柑を食べる頃になると、この句を思い出し、1と2のどちらがいいのか、考えるのだが、未だに結論が出ない。「爪たてば」でも十分意味が分かるからだ。
それはそれとして、「命したたる」がいい。それこそこの句の「命」とも言える。
その後しばらくして、Sさんの会社は倒産したらしく、行方不明になった。どうやら、家族を捨ててフィリピンに逃亡したらしい。