5時起床。身支度を整え、早朝の托鉢を見に出掛ける。この時間、中心地の至る所で托鉢が行われており、それがルアンパバーンの名物になっている。実際に見るまで、私は托鉢をかなり神聖な儀式で、厳かな雰囲気の中に行われるものだと思っていた。しかし実際には、住民たちはかなり気楽な感じで、中にはお喋りをしながらポンポンとご飯を投げ入れている人もいた。当たり前といえば当たり前なのだが、彼らにとって托鉢僧に施しをするのはごくごく普通の日常に過ぎないのだ。もちろん、1人で黙々と行って、終わった後には祈りを捧げているような、私の想像していた通りの人たちもいたが、それもまた特別な行為ではなく、日々淡々と繰り返しているものとして行われているようだった。仏教、というか宗教や信仰といったものが身近にあるというのはこういうことなのか、と新鮮な驚きを持って眺めることが出来た。ちなみに、この托鉢は観光客に大人気なのだが、比較的観光客の少ない裏路地で、早い時間に行くとゆっくりと見ることが出来る。5時半過ぎから行くのが良いだろう。6時頃になると他の観光客が増えて来る。それはそれで興味深い光景ではあるが。
托鉢僧が来るまでの待ち時間は、住民たちの憩いの時間になっているようだ。みんなでワイワイとお喋りを楽しんでいる。
6時頃になると、こういう感じで観光客が増えて来る。
この子は施しをするのではなく、逆にお坊さんから品物を分けてもらっていた。これもセーフティネットのひとつの形なのだろうか。
そのまま、ルアンパバーンで一番有名なお寺、「ワット・シェントーン」へ。豪華だが落ち着きや威厳を感じられる、素晴らしいお寺である。全体の迫力だけでなく、細部へのこだわりも見事で、建物の近くに寄って眺めるとついつい惹きこまれてしまう。また、早朝なので人がほとんどおらず、朝の凛とした空気の中で参拝すると、とても清々しい気持ちになった。
続いて、国立博物館へ。かつて王宮だった建物が博物館になっており、実際に王族が使用していた部屋や家具、調度品などが展示されている。宗教儀式に使われる部屋や客人と接見する部屋が豪華に飾られているのに比べ、王や王妃の寝室や食事の部屋などがシンプルなのが印象的だった。展示されている品々も単に豪華とか綺麗というだけでなく、実際に使用されていたものが多く、当時の生活が臨場感を持って伝わってくる。また、他国から贈られた品物も数多くあり、日本から贈られた陶器なども結構な数が展示されていた(内部は撮影禁止なので、写真は外観しかない)。
朝食を求めて、地元の人向けの朝市を覗いてみる。肉や魚、野菜、穀物など、ありとあらゆるものが並んでいる。店先に裸で並んでいるので衛生面を考えると少し不安にもなるが、どれも新鮮で美味しそうだ。ただ、鶏の内臓が売られていたり、店先でおばさんが包丁を斧のように振りかざして魚をさばいている(というよりは、ぶった切っている)様子は結構衝撃的だった。
肉だけでなく、内臓も売り物になっている。
昨日夕食を食べた屋台街に足を伸ばし、牛肉の入った「フー」(米粉麺)を朝食にする。実は昨日もこれを食べたかったのだが、牛肉が売り切れになっていて諦めたのだった。昨晩とは違って全く人がおらず、営業していないのかと思いきや、仕込みをしていたおばちゃんが優しく迎え入れてくれた。麺も太いものと細いものが選べ、私が迷っていたら半々にして作ってくれるという優しさ。出て来たフーはスープの味がとても優しく、米粉麺もツルツルしていて、朝食にはもってこいだった。半生の牛肉もちょっと怖いが、味は抜群。私が「美味しいー!」という表情をしていると、隣の席で仕込みを再開していたおばちゃんもニコニコしていた。ご馳走さまでした。
トゥクトゥクに乗り、郊外にあるお寺へ向かう。運転手のお兄さんがなかなかのイケメンだった。しかも、この手の乗り物にしては結構な安全運転。ありがたし。
まずは、「ワット・タートルアン」へ。かつては王室の火葬場として使われており、王様の遺灰も埋葬されているお寺である。今はちょうど建物を増築しているようで、若いお坊さんたちが木を切り出して運んでいるところだった。みんな骨格だけの屋根に上って作業しているのだが、当然命綱なんかはしていないので、見ているこちらが落ち着かない。
本堂の扉が開いていなかったので、ダメ元でお寺の方に中を見せてもらえないかとお願いしたら、快く鍵を開けて中へ案内して下さった。そして中に入った瞬間、勇気を出してお願いしてみて良かったと心から思った。薄暗い堂内で輝きを放っている仏様の姿が、圧巻なのだ。神秘的とも妖艶ともいえる雰囲気で、目の前に腰を下ろすとその場の空気に包まれている感覚になる。私と一緒に5歳くらいの小さな子どものお坊さんも入ってきて、ここでお祈りするといいよとか、その方法などについて優しく教えてくれたのもありがたかった。
少し歩いて、「ワット・マノーロム」へ。ここは壁画が有名なお寺である。建物自体も豪華でかなり大きい。壁画を間近で見ると結構凹凸があって、絵というよりも彫刻や粘土細工に色を塗ったものといった感じだった。しかも、それが「上手い!」と言えるようなものではなく、親しみを感じるタッチで描かれているのが面白い。小学校の教室の後ろの壁、みたいな感じなのだ。ちなみに、ここも堂内への扉は閉まっていたが、お寺の方が見当たらなかったので中に入ることは出来なかった。
トゥクトゥクに乗り、ホテルへ戻る。今度は少し近代的なデザインのトゥクトゥクである。遊園地の乗り物みたいだ。ただ、可愛らしい見た目に反して、スピードはかなり出る。
ホテルの目の前にやってきたアイスクリーム屋さんで、アイスを購入。ヨーグルトベースのアイスクリームにゼリーが乗ったもので、さっぱりとしていて美味しい。てっきり甘ったるい味を想像していたので、良い意味で予想を裏切られた。ちなみに、このアイス屋さんや前述のトゥクトゥクの運転手さんたちもそうだが、ラオスの人たちは「写真を撮ってもいい?」と聞くと、ちゃんとポーズを取ったりキメ顔をしてくれる。決してグイグイ来る感じの人たちではなく、どちらかというとシャイな部類に入ると思うのだが、カメラを向けるとサービス精神旺盛なのだ。このギャップが何とも愛らしく、今回の旅行で私は結構色々な人にカメラを向けて写真を撮らせてもらった。
ホテルの近くにあるメコン川沿いのレストランで、昼食をとる。注文は、スイカのスムージーと、鶏肉のラープとカオ・ニャオ。ラープとはラオスを代表する料理のひとつで、お肉や魚を野菜や香草と一緒に炒めた料理のこと。カオ・ニャオとはもち米のことで、竹を編んで作られたおひつで出て来る。カオ・ニャオを指で取って少し握って固め、中心にくぼみを作ってそこにラープを挟んで食べる、というのが一般的な食べ方らしい。そして、これがかなり美味しい。香草や柑橘系のさわやかさとお肉のジューシーさ、唐辛子の辛さが絶妙で、そこにもち米のもちもち感が加わると、いくらでも食べられる気がする。正直なところ、料理が出て来た当初は「これはかなり量が多いな…」と思ったのだが、食べ始めると最後まで手が止まらなかった。ただし、当然ながらもち米はお腹に溜まるので、食べ過ぎには注意が必要である。実際、私はこの日の夕食に悪影響が出た。
ホテルに戻り、お昼休憩。気温が最も暑くなる時間帯は、ホテルの部屋に避難するに限る。近所の商店で買ってきたラオスの煙草を吹かしながら休憩していたのだが、これが結構強くて頭がクラクラした。ただ、味は想像に反して結構美味しい。
陽が傾きかけた頃から活動を再開し、夕食を取りにメイン通りにあるレストラン「ココナッツ・ガーデン」へ。お目当ては、水牛のサイウア(ソーセージ)である。一緒にサラダとご飯(今度は普通の白米)、ノンアルコールのピニャコラーダを注文。昨日食べた水牛のステーキが絶品だったので期待していたのだが、水牛のサイウアは正直なところ微妙だった。若干の臭みもあるし、私にはちょっと粗挽きで肉々し過ぎた。あと、見た目がちょっと…。また、お米を頼んだのも失敗だった。昼食のもち米が胃の中を占拠しており、最後まで食べきることが出来なかった。すいません。
昨日に続いてナイトマーケットを歩き、明日着る用の上下の服を購入してから、昨日と同じフルーツスムージーの屋台でレモンスムージーを購入。店員のお姉さんが私を覚えていたようで、昨日以上に優しく対応してくれた。
20時過ぎにホテルに戻り、昨晩同様まったりモードへ。海外、しかも暑い国に来たときには、早寝早起きが体調管理の最重要項目である。まあ、それでもお腹の調子は狂うのだが。