社会を見て、聞いて、感じる。

人生そのものがフィールドワーク。

9月4日(日)

2017年09月18日 22時13分33秒 | 2017年

  5時起床。身支度を整え、早朝の托鉢を見に出掛ける。この時間、中心地の至る所で托鉢が行われており、それがルアンパバーンの名物になっている。実際に見るまで、私は托鉢をかなり神聖な儀式で、厳かな雰囲気の中に行われるものだと思っていた。しかし実際には、住民たちはかなり気楽な感じで、中にはお喋りをしながらポンポンとご飯を投げ入れている人もいた。当たり前といえば当たり前なのだが、彼らにとって托鉢僧に施しをするのはごくごく普通の日常に過ぎないのだ。もちろん、1人で黙々と行って、終わった後には祈りを捧げているような、私の想像していた通りの人たちもいたが、それもまた特別な行為ではなく、日々淡々と繰り返しているものとして行われているようだった。仏教、というか宗教や信仰といったものが身近にあるというのはこういうことなのか、と新鮮な驚きを持って眺めることが出来た。ちなみに、この托鉢は観光客に大人気なのだが、比較的観光客の少ない裏路地で、早い時間に行くとゆっくりと見ることが出来る。5時半過ぎから行くのが良いだろう。6時頃になると他の観光客が増えて来る。それはそれで興味深い光景ではあるが。

托鉢僧が来るまでの待ち時間は、住民たちの憩いの時間になっているようだ。みんなでワイワイとお喋りを楽しんでいる。

6時頃になると、こういう感じで観光客が増えて来る。

この子は施しをするのではなく、逆にお坊さんから品物を分けてもらっていた。これもセーフティネットのひとつの形なのだろうか。

  そのまま、ルアンパバーンで一番有名なお寺、「ワット・シェントーン」へ。豪華だが落ち着きや威厳を感じられる、素晴らしいお寺である。全体の迫力だけでなく、細部へのこだわりも見事で、建物の近くに寄って眺めるとついつい惹きこまれてしまう。また、早朝なので人がほとんどおらず、朝の凛とした空気の中で参拝すると、とても清々しい気持ちになった。

  続いて、国立博物館へ。かつて王宮だった建物が博物館になっており、実際に王族が使用していた部屋や家具、調度品などが展示されている。宗教儀式に使われる部屋や客人と接見する部屋が豪華に飾られているのに比べ、王や王妃の寝室や食事の部屋などがシンプルなのが印象的だった。展示されている品々も単に豪華とか綺麗というだけでなく、実際に使用されていたものが多く、当時の生活が臨場感を持って伝わってくる。また、他国から贈られた品物も数多くあり、日本から贈られた陶器なども結構な数が展示されていた(内部は撮影禁止なので、写真は外観しかない)。

  朝食を求めて、地元の人向けの朝市を覗いてみる。肉や魚、野菜、穀物など、ありとあらゆるものが並んでいる。店先に裸で並んでいるので衛生面を考えると少し不安にもなるが、どれも新鮮で美味しそうだ。ただ、鶏の内臓が売られていたり、店先でおばさんが包丁を斧のように振りかざして魚をさばいている(というよりは、ぶった切っている)様子は結構衝撃的だった。

肉だけでなく、内臓も売り物になっている。

  昨日夕食を食べた屋台街に足を伸ばし、牛肉の入った「フー」(米粉麺)を朝食にする。実は昨日もこれを食べたかったのだが、牛肉が売り切れになっていて諦めたのだった。昨晩とは違って全く人がおらず、営業していないのかと思いきや、仕込みをしていたおばちゃんが優しく迎え入れてくれた。麺も太いものと細いものが選べ、私が迷っていたら半々にして作ってくれるという優しさ。出て来たフーはスープの味がとても優しく、米粉麺もツルツルしていて、朝食にはもってこいだった。半生の牛肉もちょっと怖いが、味は抜群。私が「美味しいー!」という表情をしていると、隣の席で仕込みを再開していたおばちゃんもニコニコしていた。ご馳走さまでした。

  トゥクトゥクに乗り、郊外にあるお寺へ向かう。運転手のお兄さんがなかなかのイケメンだった。しかも、この手の乗り物にしては結構な安全運転。ありがたし。

  まずは、「ワット・タートルアン」へ。かつては王室の火葬場として使われており、王様の遺灰も埋葬されているお寺である。今はちょうど建物を増築しているようで、若いお坊さんたちが木を切り出して運んでいるところだった。みんな骨格だけの屋根に上って作業しているのだが、当然命綱なんかはしていないので、見ているこちらが落ち着かない。

  本堂の扉が開いていなかったので、ダメ元でお寺の方に中を見せてもらえないかとお願いしたら、快く鍵を開けて中へ案内して下さった。そして中に入った瞬間、勇気を出してお願いしてみて良かったと心から思った。薄暗い堂内で輝きを放っている仏様の姿が、圧巻なのだ。神秘的とも妖艶ともいえる雰囲気で、目の前に腰を下ろすとその場の空気に包まれている感覚になる。私と一緒に5歳くらいの小さな子どものお坊さんも入ってきて、ここでお祈りするといいよとか、その方法などについて優しく教えてくれたのもありがたかった。

  少し歩いて、「ワット・マノーロム」へ。ここは壁画が有名なお寺である。建物自体も豪華でかなり大きい。壁画を間近で見ると結構凹凸があって、絵というよりも彫刻や粘土細工に色を塗ったものといった感じだった。しかも、それが「上手い!」と言えるようなものではなく、親しみを感じるタッチで描かれているのが面白い。小学校の教室の後ろの壁、みたいな感じなのだ。ちなみに、ここも堂内への扉は閉まっていたが、お寺の方が見当たらなかったので中に入ることは出来なかった。

  トゥクトゥクに乗り、ホテルへ戻る。今度は少し近代的なデザインのトゥクトゥクである。遊園地の乗り物みたいだ。ただ、可愛らしい見た目に反して、スピードはかなり出る。

  ホテルの目の前にやってきたアイスクリーム屋さんで、アイスを購入。ヨーグルトベースのアイスクリームにゼリーが乗ったもので、さっぱりとしていて美味しい。てっきり甘ったるい味を想像していたので、良い意味で予想を裏切られた。ちなみに、このアイス屋さんや前述のトゥクトゥクの運転手さんたちもそうだが、ラオスの人たちは「写真を撮ってもいい?」と聞くと、ちゃんとポーズを取ったりキメ顔をしてくれる。決してグイグイ来る感じの人たちではなく、どちらかというとシャイな部類に入ると思うのだが、カメラを向けるとサービス精神旺盛なのだ。このギャップが何とも愛らしく、今回の旅行で私は結構色々な人にカメラを向けて写真を撮らせてもらった。

  ホテルの近くにあるメコン川沿いのレストランで、昼食をとる。注文は、スイカのスムージーと、鶏肉のラープとカオ・ニャオ。ラープとはラオスを代表する料理のひとつで、お肉や魚を野菜や香草と一緒に炒めた料理のこと。カオ・ニャオとはもち米のことで、竹を編んで作られたおひつで出て来る。カオ・ニャオを指で取って少し握って固め、中心にくぼみを作ってそこにラープを挟んで食べる、というのが一般的な食べ方らしい。そして、これがかなり美味しい。香草や柑橘系のさわやかさとお肉のジューシーさ、唐辛子の辛さが絶妙で、そこにもち米のもちもち感が加わると、いくらでも食べられる気がする。正直なところ、料理が出て来た当初は「これはかなり量が多いな…」と思ったのだが、食べ始めると最後まで手が止まらなかった。ただし、当然ながらもち米はお腹に溜まるので、食べ過ぎには注意が必要である。実際、私はこの日の夕食に悪影響が出た。

  ホテルに戻り、お昼休憩。気温が最も暑くなる時間帯は、ホテルの部屋に避難するに限る。近所の商店で買ってきたラオスの煙草を吹かしながら休憩していたのだが、これが結構強くて頭がクラクラした。ただ、味は想像に反して結構美味しい。

  陽が傾きかけた頃から活動を再開し、夕食を取りにメイン通りにあるレストラン「ココナッツ・ガーデン」へ。お目当ては、水牛のサイウア(ソーセージ)である。一緒にサラダとご飯(今度は普通の白米)、ノンアルコールのピニャコラーダを注文。昨日食べた水牛のステーキが絶品だったので期待していたのだが、水牛のサイウアは正直なところ微妙だった。若干の臭みもあるし、私にはちょっと粗挽きで肉々し過ぎた。あと、見た目がちょっと…。また、お米を頼んだのも失敗だった。昼食のもち米が胃の中を占拠しており、最後まで食べきることが出来なかった。すいません。

  昨日に続いてナイトマーケットを歩き、明日着る用の上下の服を購入してから、昨日と同じフルーツスムージーの屋台でレモンスムージーを購入。店員のお姉さんが私を覚えていたようで、昨日以上に優しく対応してくれた。

  20時過ぎにホテルに戻り、昨晩同様まったりモードへ。海外、しかも暑い国に来たときには、早寝早起きが体調管理の最重要項目である。まあ、それでもお腹の調子は狂うのだが。


9月3日(日)

2017年09月18日 00時59分24秒 | 2017年

  今日の日記は、深夜から始まる。前日(2日)の夜22時過ぎに家を出て、羽田空港へ。今日から、ラオスのルアンパバーンとタイへ一人旅である。

  羽田空港0時40分発のバンコクエアウェイズ4152便に乗り、バンコクへ。JALからのコードシェア便なので安心感はあるが、満席で真ん中の席だったので、結構つらい時間だった。結局、ほとんど眠れなかったし。

  スワンナプーム(バンコク)には、朝の5時前に到着。乗り継ぎまで5時間以上あるのがつらいなと思っていたのだが、バンコクエアウェイズのラウンジがとても快適で、横になって眠ることも出来たのでありがたかった。通常、この手のラウンジはハイクラスの座席を予約していないと入れないのだが、バンコクエアウェイズはエコノミー座席のお客にもこういうラウンジを開放している。これは、本当に素晴らしいサービスだと思う。

  寝不足もかなり解消したところで、スワンナプーム10時05分発のバンコクエアウェイズ941便に乗り、ルアンパバーンへ。予想通り、小型のプロペラ機である。しかし、ほとんど揺れることもなく、快適なフライトだった。

  12時過ぎにルアンパバーンに到着。これぞ東南アジアの地方空港といったラフな感じで、私たち乗客は普通に滑走路を歩いて空港の建物へ向かう。予想どおり、かなり暑い。

  タクシーでホテルに向かい、チェックインの手続きをしてから、部屋の準備がまだ出来ていないとのことだったので、昼食を取りに出掛ける。お目当ては、水牛のステーキ。「カフェ・バーンワットセーン」というレストランに入る。かなりお洒落なレストランだ。

  水牛のステーキは、期待を遥かに超えて美味しかった。脂身の少ない赤身肉で、肉そのものがかなり柔らかく、その上ジューシー。水牛独特の味や臭みなどは全くないので、事前に知らなければ普通にとても良い牛肉の赤身だと思うだろう。あまりに美味しいので、最初の1口を食べた瞬間に思わず天を仰いだほどだ。そのまま食べても、バジルバターと合わせて食べても最高。これは、一発目の食事から大当たりである。また、サラダも洗練されたビネガーソースで美味しく頂けたし、何よりフランスパンのレベルがかなり高かった。さすが、ラオス。

ミックスフルーツのスムージー。暑いところへ来ると、こういう飲み物が本当に美味しい。

  そのまま、メイン通りを少し散策する。私が滞在しているルアンパバーンの中心地は完全に観光産業のための地域になっているので、メイン通りには観光客向けの飲食店やマッサージ、旅行会社などが並んでいる。ただ、これは後述のナイトマーケットなどでもそうなのだが、現地の人たちは観光客に対してグイグイ来る感じがないので、街の雰囲気はとても落ち着いたものになっている。

  せっかくなので、道沿いに建っていたお寺(ワット・マイ)に入ってみる。この建物の形が、ルアンパバーン様式の典型らしい。遠巻きに眺めているとそれなりに地味な感じと思いきや、建物に近づくとその豪華さに驚かされる。壁全体が黄金で装飾されているのだ。これは、圧巻。日本などで黄金の建物や装飾を見るとちょっといやらしい感じを受けるが、ここの黄金色はなぜか落ち着きというか、厳かさを持っている。

  堂内で、仏様に手を合わせる。このお寺に限らず、今回の旅行で訪問した数々のお寺で私は、同じお願い事を繰り返した。どうか、叶いますように。

  メコン川沿いの道を歩いて、ホテルへ向かう。今、簡単に「メコン川」と書いたが、学校で習った世界でも有名な川を実際にこの目で見るというのは不思議な感覚である。教科書の写真ではなく、本物なのだ。川岸まで下りていって眺めると、その雄大さがよくわかる。

橋が架かっていないので、人だけでなく車も船で対岸へ渡る。

  今回宿泊したのは、「The Belle Rive Hotel」。メコン川沿いにある比較的高級な部類に入るホテルで、今回はその中でも少し背伸びをしてバルコニー付きのメゾネットルームを予約した。部屋はとても綺麗だし、ベッドも大きく、リラックスできる環境である。冷蔵庫の中の水やジュースが無料というのも、この暑いルアンパバーンではとてもありがたい。スタッフの皆さんもとても優しくて、このホテルを選んで正解だったと思う。

  部屋で少し休憩してから、再び散策に出る。ルアンパバーンの中心地は観光地化されているとはいえ、メイン通りを外れてしまえば、普通に民家が立ち並んでいる。今日は日曜日なので、子どもたちも学校はお休みのようだ。

  「ワット・セーン」というお寺に立ち寄る。メイン通り(サッカリン通り)にあるので滞在中に何度も目にすることになるお寺なのだが、建築物としてとてもかっこいい造りだなというのが第一印象で、その感嘆の気持ちは最後まで変わらなかった。

  メイン通りを歩いていくと、ナイトマーケットの準備が始められていた。私はその横を通り過ぎ、「プーシー」という小さな山へ登る。それほど高い山ではないのだが、なにせ暑いのでかなり体力を消耗する。

  山の上からは、ルアンパバーンの街を一望することが出来る。文句なしに、素晴らしい景色である。更に、ここから見える夕日が素晴らしいと聞いていたのだが、それを目的にどんどん人が増えていき、しかも日本人が結構いて、日本語で喋っていたり、私が日本人だとわかると話しかけてきたりするので、夕日は諦めて下山する。なぜ海外まで来て、わざわざ日本人同士でつるもうとするのか、意味がわからない。

  下山する頃には、ナイトマーケットの準備が着々と進んでいた。その入口の所にあるフルーツスムージーの屋台で、店員さんお勧めのパッションフルーツと何かもうひとつのフルーツを合わせたスムージーを購入。氷と一緒にミキサーにかけているのでキンキンに冷たく、フルーツの甘みや酸味がガツンとやってきて、美味しい。

  休憩がてら、「レモングラス・サウナ&トラディショナル・マッサージ」で、薬草サウナに入る。サウナの中は薬草の蒸気で溢れていて、香りが良いのでとても気持ち良い。現地の人たちも入りに来ており、色々と世話を焼いて効果的な入り方などを教えてくれた。お茶が飲み放題なので、サウナに入っては外の空気で身体を冷やしながらお茶を飲み、またサウナへ、ということを繰り返す。夕方になると外もかなり涼しくなってくるので、熱々のサウナから出て風に当たると気持ち良い。最後にシャワーを浴びると、驚くほどすっきりして身体が軽くなった。普通のサウナとは一味違う爽快感があった。

結構ちゃんとしたロッカーもあるので、安心。タオルやサウナ着もちゃんと貸してもらえる。

一応、サウナはきちんと男女別になっている。ただ、ロッカーは共用で、一応更衣室もあるが、女性は少し抵抗があるかも。

  サウナを出る頃には、ナイトマーケットが本格的に始まっていた。今日はまだ初日なので、偵察がてら1周回ってみることにする。織物や衣類、小物などを中心に、お酒や絵画、工芸品、珈琲やハーブティーなど、様々なものが売られている。お土産に買いたいようなものは、ほとんどここで揃うだろう。しかも、強引な営業が全くなく、せいぜい笑顔で「サバイディ―」(こんにちは)と声を掛けてくるくらいなので、ゆっくり見て回ることが出来る。子どもたちが店番をしていることも多く、お菓子を食べたり、携帯ゲームをやったりと、自由な雰囲気だ。これくらい商売っ気が薄くて緩い空気が流れていると、こっちも気楽に買い物が楽しめる。

  ナイトマーケットから1本横道に入ると、屋台が立ち並んでいた。今日の夕飯は、ここで食べることに決める。何かわからない料理が大量に並んでいていろいろと目移りする中、店先で焼いていた魚と鶏肉がとても美味しそうだったので、両方頂くことにする。そして、これが大正解。特に魚がふっくらと焼きあがっていて、脂ののりも良く、美味しかった。味付けは(おそらく)塩だけというシンプルなものだったが、それが逆に魚の美味しさを際立たせている。あの真っ茶色のメコン川で獲れた魚がこんなに美味しいなんて、ちょっと予想外である。ちなみに、鶏肉は良くも悪くも日本で食べるものと変わらなかった。

  ナイトマーケットの通りへ戻り、今度は屋台で食後のスイーツを食べることにする。たこ焼きを焼くような機材で作られているココナッツパンケーキを買ってみたところ、思っていた以上にココナッツの風味と甘さがあって驚いた。屋台なのでひとつひとつに焼き加減の差があるのはご愛嬌といったところだが、この味は日本でも普通に人気が出るような気がする。

  ホテルへ向かって歩く。メイン通りはとても明るいのだが、1本道を逸れると一気に真っ暗になり、少し怖い。また、途中のお寺で夜のお勤めが行われており、外に漏れ聞こえてくるお経が心地よかった。

  ホテルに戻ってシャワーを浴びてから、ゆっくりと本を読む。今回、文庫で4冊シリーズの小説を持ってきた。旅行先でこのような時間を持てるのが、とても幸せなことだということに最近ようやく気付けた。