この星の夕刻、ミルは裏山の上、お気に入りの場所で1人腰を下ろして夕日を眺めていました。あの日、夕日に誓った通りミルは同期生の中で最優秀の成績を修め、その後この故郷の星を後にしたのでした。星での教育期間終了日に思いを馳せると、ミルには当時の充実した達成感が甦って来ます。そして、共に同じ学業を終了した何人かの幼馴染の顔が目の前に浮かんできます。『あの子がねぇ。』最後まで自分とトップを争っていた最優秀の女性、それはあの日自分を奮起させる言葉を残して去って行った女の子でした。
「彼女のおかげで最後まで気を抜かずに頑張れたんだなぁ。」
思わず独り言を漏らしながら、同期生に秀でた彼女がいてくれた恩恵に感謝するミルなのでした。何事に寄らず、学問であれ運動であれ、あらゆることに惜しみない才能を発揮していた彼女。その当時の初々しい若やかな顔を思い出すと、ミルは自然と目が潤って来るのでした。『あの頃の彼女が懐かしいものだ。』彼は溜息を吐きました。
彼の帰省パーティにも顔を出してくれていた彼女でした。その場では一言二言挨拶を交わしただけで、そのまま人波に押されて離れて行ってしまった彼女でした。『もっと話したかったんだがなぁ、彼女はもう結婚していたんだな。』
「酔った勢いで変な事を口走らなくてよかった。」
彼は赤くなって俯きました。見上げると、沈んで行く夕日が昔と変わらずにしみじみとした清涼感を彼に感じさせてくれます。淡い感傷から立ち直り、漸く落ち着いた彼は暗くなる前に家に帰ろうと思いました。座り込んでいた地面から立ち上がると衣服の汚れをパタパタと落とし山を下り始めました。何心無く戻る彼は何時もの山道でぱったり彼女に出会いました。
「あらっ。」
やあ、と驚きながら、ミルは微笑んで彼女に挨拶しました。彼がこの星にいた頃、2人はよく偶然この裏山の道で出会う事がありました。今日も出会うなんて、彼が見ると彼女は手にあの二日酔いに効くジュースの実、カウの実を袋に入れて抱え込んで持っていました。
「随分沢山摘んだんだね。」
ミルは言葉を掛けました。彼女はええと微笑みました。