「よし、そういう事なら私が責任をもって引き受けよう。」
ドクター・マルは気さくにミルの心配事を引き受けると、ミルの持って来た紫苑さんに関するデーターを受け取り、「彼の事は全く気に掛けないで自身の休暇にのみ専念するように。」とミルに忠告するのでした。
「こちらの事をあれこれ心配していては折角の骨休みが台無しだ。何の為の休暇か分からなくなるからね。」
じゃあ、十分に楽しんで来ておくれ。そう言ってドクターはにっこり笑うとミルの肩をポンポンと叩き、「万事僕に任せておきたまえ。」と落ち着いて言うと、彼の部屋から確りとした足取りで去って行きました。
「如何だい、彼はうまく帰りそうだった?。」
チルはドクターに尋ねました。ああ、とドクター。やはり地球人の男性の事を気にかけていたが、僕の方で万事引き受けることにしたから安心していたよ。このまますぐに帰郷するだろう。ミルから受け取ったデーターを見せながら説明するドクターに、チルはほっとしたように笑顔で頷き、暫く2人はミルの話を続けました。
「お陰様で、大ごとにならずに済んだよ。」
副長のチルは赴任して未だそう期間の過ぎないシルにお礼の言葉を述べました。
「そう。彼、あの見た目お年寄りの年代の男性に、可なりご執心だったものだから。」
ああ、僕も一寸度が過ぎている気がしていたが、1度忠告しておいたからそう心配していなかったんだ。彼もこの星の住人に対してもっと冷静に関わり合うようになれるといいんだが、今回のこの休暇で自分の肉親に会えば、彼のホームシックも解決するだろう。あの地球人のお年寄りにも興味が無くなるだろう。
「ミルったら、本当に、年甲斐もなく今頃ホームシックになるなんて…。」
如何にもミルらしい。と、2人は息ピッタリに言葉を重ねるとハハハと声に出して笑い合うのでした。