Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

親交 29

2019-04-05 14:55:22 | 日記

 その後4月に入り、図書館ではしばしば交友を深めるミルと紫苑さんの姿が見られるようになりました。見た目が老若の2人です。親しげな2人の様子に傍からは実の祖父と孫に見られました。そんな2人が真面目に学問の話をして、にこやかにひそひそと意見を交わし合っているのですから、気付いた周りの人間は微笑ましい目で彼等を眺めていました。

   時が過ぎ、2人が他人同士と知る人が出てくると、彼等の様子が気になる人も少なからずいるようになりました。それとなく2人の会話に耳を聳てる人も目立つようになった頃、ミルは館の外、戸外の公園の散策路へと紫苑さんを誘いました。

『変に勘ぐられては敵わない。』

紫苑さんにも良くない結果を招くだろうと、ミルは考えたのでした。

 公園は新緑の季節に入っていました。散策路の側には濠が巡り、濠には公園に植えられた木々の濃い緑陰が映り、時折水中の鯉が作り出す波紋が幾重にも重なって広がって行きます。2人は広々とした濠全体が見渡せる高台のベンチがある広場までやって来ました。そこには今を盛りとばかりに桃色の塊となったサツキの花が咲き誇っていました。その他にも紅色や白などのサツキの花が綺麗にまあるく剪定されて、辺りに毬状に寄り集まって植えられています。登り道を上がって来た2人はここで一息つきました。


親交 28

2019-04-05 14:32:23 | 日記

 「僕の方は既に任務初期の、第一段階のレポートを艦長に提出してあるんだ。」

だから君の方の初期レポートが余り遅れると、君に対する艦長の心証が悪くなるだろう。君の評価が下がる事になるからね。僕にとっても君を選抜した以上、僕自身の管理能力が問われることになる。それは極力避けたいんだ。副長の言葉に、ミルは事を急がねばならないと相当なプレッシャーを受けたのでした。

 「実は副長。」

ミルは星の地表で出会った、地球人男性の事が気になっている事情を説明しました。

「暫く彼の様子を観察したいんです。」

「地球人女性ではなく?」

そんな年寄りの男性の方を?君はそちらと交際したいのかい?真顔で尋ねる副長の真剣な顔に、ミルは思わず吹き出してしまうのでした。

「いえいえ、…」副長の考える様な交際ではなく、何というか、その男性は自分の祖父に似ていて、1人孤独な様子が気にかかるんです。多少笑いを含んだミルの声に、副長はつられて笑う事も無く、相変わらず渋い顔つきで言うのでした。

「特殊任務に、今回地球人男性は含まれないんだ。」

老いも若きもね。星の上で出会った女性にターゲットを絞ってもらいたい。もっと手早く任務遂行と行かないものだろうかね。副長はそう言うと、ミルの答えも待たずにさっさとその場から歩み去ってしまうのでした。

 はーっと、溜息と共に、ミルは窓外の地球を眺めるのでした。『こうなったら手直な所から片付けてしまおう。』そうしないと1つの物事に全力で集中できない。ミルは紫苑さんとコンタクトを取って、出来る範囲でそれなりに彼の力になってあげようと決心するのでした。

『今度彼が図書館に来た時だな。』

ミルは日時を設定するのでした。