「どうだった?、それで彼は元気そうだったかい?。」
副長のチルが船内に戻って来た鷹雄ことミルに声を掛けました。
「年齢的には君とどっこいどっこいなのかもしれないが、この星の住人はやわに出来ているからなぁ。」
栄養状態や医療水準が未だそうよく無いようだからね、関わり合うならこっちの方で気を回さないと駄目だ。向こうは何処でどんな状態になるかてんで分からないんだからね。チルは上官らしくミルに忠告しました。
「身体面や精神面等、お前なら彼の発する光を見て予想出来ただろう。」
これからはもう少し相手の健康に気を回すんだね。この星の住人と付き合うなら年齢じゃ無く、その見た目で判断した方がいいよ。
「見た目だよ、見た目。」
チルはミルに念を押すのでした。
そうか、と、自室に戻ったミルは副長の言葉を噛みしめていました。確かに、彼が祖父との楽しい思い出を紫苑さんとの一時に重ね合わせていたのは事実でした。余りにも自分本位だったとミルは反省しました。これからは紫苑さんのオーラの変化に注意して、彼のペースに合わせたお付き合いにして行かなければと決意するのでした。
『それにしても、副長は何でもよく調べてあるものだ。』彼は感心していました。部屋には地球上の病人介護や料理の本、その他交際の仕方、マナーなど、所謂現代常識を書いた本が一塊置かれていました。
「副長は何処でこれらの本を手に入れて来たんだろうか?」
ミルは改めてそれらの本を見詰めると少々げんなりして来ました。『こんな事だって、自分で興味を持って調べるならどんなに楽しい事だろうに。』如何にも人から催促されたように押し付けられたのでは、こっちだって少々嫌気が差すというものだ。あーあ。溜息を吐きながら、ミルは可なりご機嫌斜めの態で自分の寝所に突っ伏するのでした。