祖父も祖母も共に幼馴染、長じてからも仲の良い関係そのままに結婚したのでした。祖父と祖母に限らず、この地域の住人は大抵が幼い頃からの顔馴染みと結婚すると、その終生を共にする者が多いのでした。
「お前もそろそろ結婚する女性がいる頃だろう。」
宇宙へ出て出会わなかったのかい?興味深そうに徒っぽい光を目に浮かべて祖父は尋ねました。ミルは少し顔をしかめて祖父を見ましたが、自分を見ている祖父のその顔が今まで見慣れていた紫苑さんの笑顔に重なって見えて来ます。
『向こうでは紫苑さんの顔が祖父に見えたのに…。』
こちらでは自分の祖父の顔が彼に見えるのですから、ミルは不思議な事だと感慨深く思いました。彼も祖父も、自分の事を親身に思い気遣ってくれるからだろうか。そんな事を考えて物思いに耽っているミルに、祖父は誰か女性の事を考えているのだと推察したのでしょう、こう孫に声を掛けました。
「それで、お前が思いを寄せる女性はどんな子なんだい?。」
えっ、ふと我に返ったミルは祖父の顔を瞬きして見詰めると、どんな子ってと、しどろもどろになり掛けて突然地球人のうら若い女性、そのはにかんだ笑顔を思い浮かべました。
「ハ、は、は、…」
笑いとも何ともつかない声を出しながら、はははははと笑ってごまかすミルなのでした。「未だそこまでは考えていないんだ。」伏し目がちに答えたミルは、その女性との交際がうまく行ったら、必ずお祖父ちゃんにも話すからと祖父に約束するのでした。
「うまく行ったらね。」
一寸しんみりとした笑顔のままでミルは言葉を切りました。