道を行く母の背を見ながら、歩く娘逹2人はお互いを見遣った。不憫な自分達の従弟の事を考えると義憤に駆られ、いざと食堂を出て母とこうやって歩き出した2人だったのだが、一筋に延びる道に出てみると、2人共食堂に1人残してきた彼女逹の祖父、その彼の先程元気の無かった様子が目に浮かび、酷く気に掛かって来たのだ。
「お祖父ちゃん如何かしたのかしら。」
そうねとぽそぽそ祖父の身を案じて2人小声で話し合っていると、先を歩く彼女達の母が振り返った。
「何だか妙ね。」
あなた達何か隠している事でもあるのと、母は娘達に問いかけた。そこで2人は口々に食堂で祖父が元気無い様子でいた事を彼女に話した。何だか心配で、お祖父ちゃんの方が先にあの世へ行ってしまいそうだ。「あの子よりね。」と、妹の言葉に姉が付け足した。祖父と同居している幼い子より、祖父の方が今しも他界するのではないか、そんな風に感じられる2人なのだ。
病気なのかも知れないと、子等が母に訴えれば、母はまさか、お元気でしたよと彼女達の言葉を否定した。母はその儘、自分の娘達を促して元の様に歩き掛けた。そんな母の背に「お母さん。」と、姉娘が何事か決心した様に声を掛けた。あの子は食べ物に煩い子や。「そうね、凝り性よね。」と、妹もそんな姉の言葉に口添えした。しかもサンドイッチ食べてるんやろ。味わいたいよね。ゆっくりとね。娘2人は互いにウンと頷き合った。
「もう暫く来ないんじゃ無い。」
おずおずと、そう姉が先程急いていたのとは反対に、如何にも引き止める様に彼女逹の母の背に声を掛けると、彼女はさっと振り返った。
振り返った母は自分の娘2人の思い詰めた様子を直ぐに見抜いた。
「そうね、お義父さんの方が大事ね。」
あの子よりね。と、彼女は義弟三郎の子、その幼い歳下の子より我が子であると内心思うと、こう子等に語りかけた。
そこで彼女は自分の子等の思いを汲むと、彼女逹の祖父、義父の方が彼女等の従弟より優先であり大事だと言うと、姉妹の考えに同意してみせ、即座に彼女の踵を返した。食堂へ戻り始めた彼女は自分の娘2人の肩を抱いて歩み始めた。お母さん気が付かなくて、よく言ってくれたわねと、彼女は自身の娘逹2人を労うのだった。