さて、遊具の側に移った2人です。彼女は念入りに、あれこれと彼が話す話にじっくりと耳を傾けていました。彼が話す間、彼女の方は天を仰いでさも可笑しそうに声高かに笑ったかと思うと、時にはその背を丸めて如何にも堪え切れないという風に肩でくすくすと忍び笑いを漏らす等していました。その様子は千変万化でしたが彼女は終始如何にも愉快で楽しそうでした。
しかし、突然ぴたりと彼女の笑い声が止みました。リラックスしていた表情や笑顔も凍り付いたように動かなくなってしまいました。彼女はそうして静かに目を伏せると、彼の話に聞き入りながら沈黙し始めました。その後の彼女はというと、何だかぴくぴくとこめかみに青筋が立ち始め、顔色も白っぽくなって来ました。そして遂に、「もうその話はいいわ。」とさも嫌そうにぽつりと漏らすのでした。
実はこの時彼女は怒っていたのです。ぷりぷりしてその後の彼のお喋りを聞いていました。そして突然、
「あの子と誰が仲良くたって、私にはそんな事どうだっていい!」
そう吐き捨てる様に言い放つと、彼女は唇を噛みしめて仁王立ちの様な格好になりました。彼女の髪が怒りの炎で燃え上がり、天を突くようにその先が立ち上っている様に見えました。彼女は言葉を続けました。
「そんな話聞いてもしょうがないでしょ!」
そうきつく彼女に言われた彼ですが、普段の取り澄ました彼女に似合わぬ渋面が如何にも彼には可笑しかったので、彼は笑顔を浮かべると彼女の顔を見て話を続けました。それに対して彼女の方は遂に怒り心頭に発するという体になりました。
「もう喋るな!」
彼女は居丈高にピシャリと彼を叱りつけました。今にも平手が振り下ろされそうな気配でした。
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