ああ、マルは答えました。いえ、一寸…、風邪気が有るのでしょう。
「ここが木陰で涼しいので、急に冷えを感じたようです。」
背筋にぞくっと来まして。マルはそんな事を口にして無理に笑いました。それから彼は、自分の釣りの目的について紫苑さんに何と答えたらよいかと考え始めました。
そう言えば、「フィッシングはスポーツ」とか言う見出しが躍っているのを何処かで見たな。彼は思い出しました。船で身だしなみの事ばかり考えていたマルは、表面だけ釣りのモードにして来たのです。これは彼がここしばらく忙しかったからでしょう。物事を深く探求出来なかった彼を攻める訳には行きません。とはいえ、球上に降り立つ安全準備をきちんと整えて来なかったのは失敗でした。
『興味より安全優先だったな。』
マルは後悔しましたが、今反省している余裕は有りません。そこで、『何の事かと思っていたが、』と、彼は今頭に浮かんだ見出しの文句について考えてみました。
スポーツというからには、競技を楽しむ物だろうと彼は想像しました。『楽しむか…。』その線に合わせようと彼は即座に決意しました。
「釣りは楽しみです。」
マルは身の震えを抑えつつこう語り出しました。ええと…、
「釣りは私と魚との楽しみです。」
そうそうこの方向だな。彼は内心ナイス!と手を打ち鳴らしました。
それから彼は考え着くままに言葉を口に出し始めました。『落ち着いて、落ち着いて、』心の内にそう呟きながら、彼は平常心を保つよう常に心掛けました。
「私にとっての釣りは、正々堂々、勝負に勝つか負けるか、釣るか釣られるかの勝負です。」
所謂、魚との遊びですね。マルは言いました。
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