それから3、4日程して、あるいはもっと日にちが過ぎていたかもしれませんが、
私は母に、Lさん宅から最近遊びに来ないのでLさんが寂しがっている、遊びに来ないかと言う連絡があったと聞きます。
『あれ、遊びに行っていいのかな。』
と、私は怪訝に思いました。
あれ以来、てっきりLさんは私の事を怒っていて、もう遊びたくないと断るつもりなのだと思っていたのです。
母の話では、いや遊びに来て欲しいという話だったというので、私は半信半疑、やおら家を出るとLさんのお宅に向かいます。
Lさんの家に着くと、何時ものようにLちゃん、遊びましょうと玄関で声をかけます。
直ぐに間近で返事がありました。
声のした方を覗くと、居ました、Lさんは既に玄関の横の部屋でもう本を読んでいました。
「は、早いね。」
もういつも遊ぶ部屋に来ているのだとびっくりして私は言います。
私達はこの玄関横の部屋で何時も遊んでいたのですが、遊びに行くと大抵はLさんは奥の部屋にいて、
呼ぶと漸く出て来るという具合でしたから、遊び部屋で待ち構えたように彼女が返事をしたのは、
過去に無い事も無いのですが、今回以外は殆どありませんでした。
長い事来なかったね、如何して?
と理由を聞かれても、私にするとLさんが怒っていると思っていたので、
来てはいけないと思っていましたから、こうやって呼んでもらえた事自体が不思議な感じがしていました。
Lさんと会った最後の場面を思い出してみても、
こんな子だと思わなかった、如何しよう、の言葉の後は、もう付き合わないでおこう。
だと思っていたのです。
しかも、つい口から出た事とはいえ、行ったのと聞かれてううんと嘘をついてしまったという事実も、
私にはとても後ろめたい出来事でした。
「Lちゃん、もう私と遊びたくないんじゃないの?」
そうだと私は思っていたのだと打ち明けます。私の事を怒っているのだと。
そうすると、Lさんはびっくりして、
「私が?、怒ってないけど。」
そう言って読んでいた本から身を起こすと、
Lさんは如何して私がそんな事を思ったのかと不思議そうな顔をして尋ねるのでした。
Lさんによると、自分から付き合いを断ることは無い、そんな事はしないという事でした。
へぇー、と私は思います。ちょっとした目から鱗の気分でした。
自分の気持ちで言いたい放題、嫌な事があったら即!さようなら、幼いのに絶交さえ口にした事がある私です。
人との付き合いを断らない交際の仕方があるのだと、そういうお家があるのだと初めて知った訳です。
何時ものようにお邪魔しますと自然に玄関を上がって、
もう部屋に座っていた私ですが、Lさんの顔を見つめて妙に不思議な気持ちがしたものです。
またこうやってLさんと遊ぶことになるなんて。
『私って普通じゃないのかしら?』
今まで怒ったら自分の気持ちそのまま、感情そのままに突っ走って来た私です。
こんな私でもいいのかしら。そう聞いてみます。弾みとはいえ嘘だって吐いたし。
そう言うとLさんは急にムッとした態度になって、身が固くなりました。
ああ、あれね、あれはいけないね、駄目な事だと急に彼女の雰囲気が変わりました。
「嘘ついて、駄目じゃない。」
目に角が立つほどではありませんでしたが、彼女は目を細めてむーっと怒りが頭に上って来る感じでした。
あれれと私は思います。
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