でも、嬉し思い出もありました。
かー君の家に行き始めてからどの位い経った頃でしょうか、有る明るい午後、私は学習中のかー君の背中をまじまじと眺めていました。
私は何時もは彼の学習が終わるまで座卓の上で本など黙読しているのですが、本に読み飽きたのか持しれません。
ふと余暇を持て余す時間ができて、多分、ここへ来てこう過ごす事になった過程などをぼんやり回想していたのでしょう。
1年くらい経ってみると、当初おー君に対して腹立たしく思っていた感情が、実は自分にとってかなりの傷心であった事に気付きます。
そうか、あの頃自分では気付かなかったけれど、私の心はかなり傷ついていていたんだなぁと思いやります。
それが、こうやって過去を振り返る余裕ができたという事は、今はもう全くおー君の事は気にならず立ち直ったという事なんだなぁと、何だか感慨深く、自分で自分のごく短期間の人生を波瀾万丈と回顧するのでした。
私は念のため、おー君の楽しかった思い出を思い浮かべてみます。
次に、あの夕焼けの日の事、何度かの私からのプロポーズの事、彼が許嫁の話を明かした時の事など、苦笑いしてしまいます。
そして、ごく近い思い出、彼と彼女が並んで楽しそうに歩いている姿を思い浮かべ、彼女が私に向かってきて言った姿、言葉を思い浮かべてみます。
『私からおー君取らないで。』
そんな思い出が明るい部屋に走馬灯のように浮かび、そして、それが、私にとっては過去の事だなと思い、なんだー、と、思うのです。
特に何とも思わないと思うと、走馬灯は消えて、目の前にかー君の背中が映ります。
思えば、せっせと学習中なのに、彼に誘われた時はともかく、勝手にやって来る時もある、今こうやって居る私の存在はやはり彼には邪魔なものだろうな、それなのに、何時も嫌ともいわず、嫌な顔もせずにこうやって寄せてくれる。
そのおかげでいつの間にかおー君の事は過去の事になってしまった。
気付いてみると私は傷心から、過去を何とも思わない今の状態にまで回復できたのだ。
改めて、何だかかー君の背中に尊敬の念が湧いてきます。
『かー君、ありがとう。』
そんな事を彼の背中に向けて、私は心の中で言うのでした。
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