が、その内、見ていた従妹が形よく手を上げると、手振り身振りで拍子を取り、くるくると優雅に数回まわって見せるのです。まるで何かの舞を舞って見せてくれているよです。彼女は驚きました、そして、従妹は何時の間にそんな芸達者な真似が出来るようになったのだろうかと思うと癪に障り、眉間にきっ!と皺を寄せました。
その後も、従妹は得意げな顔を見せたかと思うとくるりと舞って、おう!とばかりに立ち止まると、深々と目を閉じて肩の辺りまで上げていた両の手を静かに下ろし、能か何かの溜めのポーズの様に型を決めたのでした。これには流石にほぉー、とばかり彼女も目を見張り、おうおうと傍らにいた兄と顔を見合わせると、へええ…、やるじゃないか、これは凄い!と感心したり、おちびのくせに何をしてくれるのだ、いつの間に習ったんだ。叔父さんも内緒にして、出し抜かれたわ。と、兄妹思い思いに呆れて感想を漏らすのでした。特に彼女は従妹のこの習い事について全く気付かなかった事を不覚にも悔しくも思うと、自分で自分を小馬鹿にした様に苦笑するのでした。「…ちゃんにしてやられたわ、私も内緒で何か習おうっと、何がいいかな。」そうふざけた様に、内心は苦々しく思いながら呟くのでした。
妹のこの言葉に、兄は一瞬顔を曇らせましたが、目の前で実際に見た叔父方の従妹の雄姿に、どっちもどっちかなと思うのでした。しかし、あの全く正直一途な叔父が、自分達にこの様に上手く隠し事が出来る物かどうかと怪しく思うのでした。従妹の年齢にしては上手過ぎる所作もどうも腑に落ちません。叔父が娘の習い事を自分達の父である兄にさえ話していないということは無いだろう、父が聞けば必ず自分達、少なくとも跡取の自分には話してくれるはずだ、きっとそうだ。そう思うと、兄の方は従妹のこの芸達者な舞が如何にも摩訶不思議な出来事であり、全く信じられない事だという気持ちになるのでした。
『夢かしら?』
自分で頬を思いっ切り抓ってみます。「痛い!」。勿論これは夢ではありません、彼は悲鳴を上げました。
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