Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

傘の思い出2

2018-01-22 17:14:31 | 日記

 『暫くお友達でいてください。』

何処の国の方か分かりません、言葉が通じないだろうと思うより先に、咄嗟に私は心の中で念じました。これは私から前に立っていた異国の女性の方への密やかなお願い事でした。私の心の中の声が通じたのかどうか、彼女は自分の傍に張り付いて隠れるようにしている私を庇うように、暫くその場で佇んでいてくださいました。

 そうやって私はずーっと彼女の陰に隠れていました。彼女が歩き出して移動する時にも、彼女の後ろにくっついて同じように移動していました。思えば煩わしい人ですよね、私って。内心そんな自分の姿を想像し、目の前の彼女の気持ちも想像すると苦笑してしまいました。変な人が自分にくっついていると気が付けば、嫌がって彼女は足早に去って行かれるだろう、そうなったらそうなった時の事と諦めて、それまで何とか彼女の傍で隠れていよう。私はそう思っていましたが、彼女は私の前に長くおられて、本当に庇って下さっているように感じられて来ました。

 不思議ですね、私は彼女に庇われている事が真実本当の事のように思えました。そして、そうやって目に見えて同性に庇われるという経験が私には殆ど無かった事から、かつて感じた事が無いような感情を経験したのでした。何だか不思議なような面映ゆい様な、自身が不甲斐無いような、ややもするとコンプレックスを感じてしまいそうな程のちょっと居た堪れないような気持ち、そしてやはり庇護していただけたという優越感にも似た嬉しい気持ちが湧いてくるのでした。

 今迄は何時も私が友人達を庇う側、世話する側になる事が全くと言っていい程通例になっていました。自分で自分の事が出来ないなんて、降りかかる火の粉を自分で払えないなんて、何て甲斐性が無い。確りしなければ。と気を引き締めてみたり、また、こうやって庇って下さる方の行為を素直にありがたい事と感謝するべきだと思ったり。そう思うと、彼女に微笑みを返し一礼すべきだとも考えるのでした。真実がどうであれ、私はありがとうございますと彼女に感謝したくなるのでした。私にだってThank you very much.くらいは言えるのでした。(英語で通じるかどうかは考えていませんでした。)


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