ギョッ!、とした。私の目に、ほの白く祖母の顔が闇に浮かんでいるように見えたからだ。
が、それは私の祖母なのだ。階段上部に有るのは私の祖母の顔ではないか!。そう思えば孫である自分が驚く事など全く無いのだ。きっと首の下にはちゃんと祖母の体が付いている筈だ。私はこう考えながら、彼女の顔、首の辺りに目を凝らした。そうして歩みをやや遅くしながら段々と階段へと近付いて行った。
異質に見えるものに対してこういった勇敢な行動をとりながら、しかしその実、この間の私は内心相当肝を冷やしドキドキしていた。変な事等無い筈だと、心中自分に言い聞かせはしたものの、私は内心の驚愕を抑えつつ祖母の顔を現実の物で、何も害のない物なのだと数回自分に言い聞かせねばならなかった。そうしてその都度彼女に注意深く観察眼を向けた。正直私の歩が止まったのも1度切りでは無かった。
祖母の顔の横に、彼女の拳の様な手が1つ見えた。それは階段脇に有る手摺上部を掴む彼女の手だった。そうかとそれを理解した私は、彼女の対になる手を探した。果たして、こちら側の階段上部で、私は自身の捜索物を発見した。
『想像通りだ。』
私は芯からほっとした。すると思わずほうっと溜息が漏れた。するとそれ迄強張った表情だった祖母も、ふいと我に返ったように目を上げて私を見た。
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