「お前、そんな泣き方、体によく無いぞ。」
兄が妹に穏やかに声をかけました。
「お前こそ変だ、何で何時もみたいに泣き喚かないんだ?」
そうも言ってみます。妹の方はまだ声が出せない状態なので、目を伏せて口に手を当ててみます。彼女はまだ何も話したくはありませんでした。
「お前の方こそ、あの子に遠慮してるんじゃないか?」
今日は何かあったのか?、兄は普段と違う妹の様子が気になり親身に声を掛けてやりました。妹の方も段々兄の優しさに絆されてしんみりとして来ました。「向かい角の〇さんがね、」と、ぽつりと漏らしました。
「向かい角の〇さんが?」
兄は妹の言葉を繰り返し、突然の思いも寄らない話の展開にその先が読めずに問い質すのでした。「で、何かあったのか?」と、彼女に質問してみます。
「その息子さんがね…」
そこまで言うと、彼女は堪えていた涙がどっとばかりに溢れ出して来て、止めようが無く、抑えていた声もうううと口から溢れ嗚咽すると、遂にはうえーん、えんえんと声に出して泣き始めました。
「皆して、あの子ばっかり、」「皆だけじゃ無く、兄さんだって」「兄さんだって、私よりあの子の方がいいんだわ。」
わんわん泣き喚く妹のこの様子に、兄は何時もの妹だと思うとほっとしました。妹の前に回るとその顔を覗き込み、よしよしと、「兄さんに何でも話してごらん、悪いようにはしないから。」と、慰めるように彼女に声を掛けるのでした。
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