孫の為とはいえ、孫の為とはいえ、
そう呟きながら、男性はウロウロと左右を行ったり来たり歩き回っていましたが、絶えられない!。
身振りを交えてそう叫んだりしました。
男性はやがて立ち止まると、意を決したように蛍さんに話し掛けました。
「君ねぇ、さっき遊んでいたお兄さんがいるでしょう。」
ああ、と蛍さんは頷きます。にこやかに、
「源さんだね。大きなお兄さんの事でしょう。」
と言います。合点だと言う風に彼女は満面笑みで笑って見せます。
男性は気落ちして、やや小さな声になると、まぁあそこもお兄さんなんでしょうが、と言い、
蛍さんの明るい笑顔を見ると、「分かった、ふざけて言っているんだね。」
そうかそうかと、意外と話せる子ではないか、と急にパッと笑顔になりました。
そして、今言った自分の言葉に蛍さんが怪訝そうな顔をすると、やっぱりと、また元のようにどんよりと気持ちが沈むのでした。
これ以上この子と話す必要があるかしら。男性は自問します。そして、なるべく蛍さんの顔を見ないようにして言います。
「私の言っているのは、ほら、さっき此処へ来る前に遊んでいたお兄さんの事だよ。」
これで漸く蛍さんは何となく男性の言いたいお兄さんの事が誰か分かりました。
「光という名前のお兄ちゃんの事?」
男性はそうそう、そちらのお兄さんの事だと言います。自分に近いお兄さんというとそっちでしょうと、
いまいましそうに、如何して最初から分からないの、不思議ねぇと、つい口から言葉が出てしまいます。
顔もしかめっ面をしてしまいました。男性にすると憤懣やる方無いというものです。
蛍さんだって、相手に自分がかなり疎い子だと思われたのだという事は分かります。そこで男性に不満気に申し立てました。
「あの子はお兄ちゃん、小さいもの。源さんは大きいからお兄さんじゃないか。」
「おじさんが最初に言ったのはお兄さん、さんだから、私は源さんのお兄さんだと思ったんだもん。」
唇を尖らせて抗議して、如何にもの不満気な表情を表す蛍さんを見て、思わず男性は目を輝かせて頬を染めました。
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