この本(まだ未刊です、いや未完です、明日からの話ですから)の第1章は「二〇一六年三月二十五日」となっていますが、本当は「第一章 三月二十六日 東京発のはやぶさ1号のグリーン車内で、乗客の一人が殺される。君たちは、乗客として、この殺人を目撃するのだ」という長いタイトルなのです。
さて、書き手は誰? 第一章を「二〇一六年三月二十五日」と書き出したのは推理作家・西村京太郎85歳、長いタイトルを第1章にして書き出したのはミステリー作家・三浦康平42歳。西村京太郎は『寝台列車殺人事件』がヒットし、単行本の累計発行部数は2億部を超えるという日本に二人とあって三人はいない(2012年)という超売れっ子作家、一方三浦康平は「売れない作家」。
この話の第一話の終わり近くでこんなやり取りがあります。
ここに名前が出る高橋社長とは三浦に『北海道新幹線殺人事件』を書かせた明日書房の社長、香織とは去年(2015年)、新人賞をもらった女性ミステリー作家、若林香織という。
香織「高橋社長と話をしたんですけど、彼は、この本の通りに、三月二十六日のはやぶさ1号のグリーン車で、本当に殺人が起きると、信じていらっしゃるみたいでしたよ」と、いう。「冗談ですよ」「そうは見えませんでした。高橋社長は自分には予知能力があって、この本の通りに事件が起きるはずだと、おっしゃっていましたよ。だからこの本は、間違いなくベストセラーになるんだとも」
こんな会話が交わされているのはいつ頃かというと、康平の「三月二十六日まで、あと一カ月もないんですよ」で、先月の末頃だと分かります。
西村京太郎の新連載『北海道新幹線殺人事件』を載せているのはKADOKAWAの書籍PR誌「本の旅人」の3月号です。この発行日が先月の27日ですから話は同時進行してすすんでいるのです。
果たして明日の北海道新幹線は?