「男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋」を一口で言えば、夫を亡くし京都で娘を育てる為にも働いていた女・かがりの寅の親切に芽生えた恋心が、戻った丹後半島での一夜では一歩引いてしまい、恋の成就を願ってあじさい寺・成就院へ誘いはしたが寅さんのダメ男の有り様で、未成就に……、という物語でしょう。
丹後半島での娘を寝かせ、寅次郎と同じ屋根の下での一夜、闇に包まれていたその町・伊根町はここ、
寅次郎の寝たふりを背に……、闇の中でため息をつく寅次郎……。
そして舞台は鎌倉へ、までには一山ふた山の盛り上がりがあって、
ここへ寅さんが満男を連れずに行けば、正に恋の成就院として名を一層高めたでしょう、が。そうはならない寅次郎でした。
もしも来年の紫陽花の時期、寅次郎風の中年男が似合いの御婦人との恋を実らせるとすれば、鎌倉から一歩半島に踏み込んだ地・葉山というシナリオが書かれてもいいでしょう。