横浜美術館で「メアリー・カサット展」を観た。感想をサクッと。
私がカサットに興味を惹かれたのは、今回展示されている《桟敷席にて》をボストン美術館で観た時のような気がする。この自意識の強そうな女性がとてもカッコ良くって、作品に込められた現代性に思わず共感したからかもしれない。
メアリー・カサット《桟敷席にて》(1878年)ボストン美術館
当時の社会を透かして見せることの巧みさはドガの影響もあるのだろうが、カサットがアメリカ人であったこともあろう。それに、何よりも彼女自身が画家として自立を目指した新しい女性でもあった。当時の女性画家の苦労はモリゾの例からもうかがえるが、カサットは画家としてだけでなく、印象派を母国アメリカに広める手助けもすることになる。
それにしても、ドガの描くルーヴルでのカサットは素敵過ぎる!
エドガー・ドガ《ルーヴル美術館エトルリア・ギャラリーにて、メアリー・カサット》(1879-80年) (考古学展示室という表記は何じゃ?)
ドガとカサットの関係はどうであれ、両者の作風から共通するものが見えるのも確かだ。例えば、一瞬の動きへの洞察とか、版画作品からも了解される浮世絵に対する興味とか、パステル画制作だとか…。
エドガー・ドガ《ルーヴル美術館でのメアリー・カサット》(1880年)個人蔵
で、今回、私的に「おおっ!」と一番興味深かったのは、カサットがコレッジョ作品の模写のためパルマに滞在していたことだ。「母子像の画家」と言われるカサットの原点がいくらかわかったような気がする。なにしろコレッジョも聖母子像を多数描いており、そこには親密で自然な愛情表現があふれているのだから。
メアリー・カサット《眠たい子供を沐浴させる母親》(1880年)ロサンゼルス・カウンティ美術館 (背景のカーテン描写にベラスケスを見てしまうのは私だけであろうか?)
今回の《眠たい子供を沐浴させる母親》の解説で、子供の足の引きのばされた仰角表現にコレッジョの影響が示唆されていた。ああ、なるほど!だった。
ということで、2008年パルマで観た「コレッジョ展」図録を本棚から引っ張り出し、当時、カサットがパルマで目にしたハズの作品をチェックしてみた。って、現在パルマに残っている作品ということになるのだが(^^ゞ
コレッジョ《聖ヒエロニムスのいる聖母》部分拡大(1527-28年)パルマ国立美術館
コレッジョ「サン・パオロ女子修道院(パルマ)院長居室天井画」(1518-19年)のプットたち (ちなみに最近、修道院長ジョヴァンナ・ダ・ピアチェンツァや装飾プランについての知識を仕入れてしまった♪)
ということで、コレッジョ研究を含め、カサットの自立した画家としての険しい道のり、作風や多彩な画業の数々、そして母子像の画家と言われる所以をしっかりと知ることのできる、なかなかに面白い展覧会だった。