今回の展覧会は「ルネサンス建築の至宝」としてのミケランジェロを紹介するものだと思うが、それ故に、一般向け展覧会として構成するのは難しかっただろうと推察する。
第1章と第2章は、ミケランジェロの生い立ちや、システィーナ礼拝堂天井画を中心に、私たちの知っている彫刻家であり画家であるミケランジェロの手紙、素描、版画等を中心として展示されていた。
やはり面白かったのは友人宛手紙「自筆のソネットに添えられた、システィーナ礼拝堂天井画を描いている自画像」だ。
「システィーナ礼拝堂天井画を描いている自画像」(1508-12年)カーサ・ブオナローティ
天井画を描いた時の苦労についてはヴァザーリも書いているが、自筆のイラストを観ると思わず笑ってしまいそうになった(^^;;。自身の描く姿のプロポーションはサスガだが、天井絵のまぁ何とカワイイこと!(笑)。ミケランジェロがとても身近に感じられてしまう。もちろん、凄~く大変だったのもわかっているのだけれどね。
そして、思わず見入ってしまったのは素描「システィーナ礼拝堂天井画《クマエの巫女》のための頭部習作」である。
(左)「《クマエの巫女》のための頭部習作」 (1508-10年)トリノ王立図書館 (右)システィーナ礼拝堂《クマエの巫女》 部分
習作は、微かに書き直し前の線が見えるが、力強い描線と陰影が年輪を刻む横顔を深く彫り込んでいる。横並列のハッチングはギルランダイオ工房の名残だろうか。線を重ねた陰影は深い皺と皮膚の質感まで暴いて見せる。ミケランジェロの素描の凄さは平面の上に年老いた量感のある横顔を見事に立ち上がらせているのだ!!
(つづく)